8/22/2008

The Forbidden Kingdom

ドラゴン・キングダム(☆☆☆)

この夏、ジェット・リーとミシェル・ヨーが共演して Dragon Emperor がなんちゃらかんちゃらというミイラ映画が公開されたかと思えば、こちらはなんと、我らがジャッキー・チェンとジェット・リー(ことリー・リンチェイ)、 2大アクション・スターがまさかの競演を果たしたという、それがロブ・ミンコフ監督の『ドラゴン・キングダム』である。この2人の競演を可能にしたのがハリウッド資本というのが不思議な縁のなせる業。

内容はへっぽこ異世界ファンタジーである。白人のボンクラ少年の主人公がカンフー映画を貸してくれる中華街の老人と関わっているうちに異世界に迷い込み、現実世界に戻るため、ひょんなことから手にした「如意棒」を「孫悟空」に返さなくてはならないというものだ。リンチェイとジャッキーはファンタジー世界において少年と目的を同じくする旅の道連れとして登場する。せっかく大スターが競演するのだから、白人少年を真ん中に置いた生煮えファンタジーなんぞと聞くとがっかりだが、愛嬌のある少年顔ながらシリアスで悲壮感溢れるドラマがお似合いのリンチェイと、テクニカルながらもコミカルな動きでユーモア感覚のあるジャッキーの、互いの持ち味が活きるような話というのもなかなか難しそうだ。

監督のロブ・ミンコフという男、ディズニー出身だ。『ライオン・キング』で知られ、『スチュワート・リトル』やら『ホーンテッド・マンション』やらで実写映画に進出。どうやらカンフー好きらしい。ファミリー・ピクチャーならそこそこ大丈夫そうだが、歴史的な作品を任せるのに適切かと問われたら、やっぱり不安が先に立つ。

こういった、両雄並び立つタイプの作品で、この監督、しかもなまくらファンタジーなどというから、どうせろくなものは見られないという諦めをもって劇場に足を運んだが、期待値の低さゆえか、少なくとも作り手がジャッキーなり、リンチェイなりに敬意を持って作っているということと、観客が観たいものをよく理解していること、それだけで好感を持った。

観客が観たいものといえば、もちろん、ジャキーとリンチェイのカンフー対決だ。

この映画、2人が敵と味方に分かれるような脚本ではないが、ジャッキー酔拳VSリンチェイ少林寺、それぞれお得意のスタイルで激しいバトルを繰り広げるシーンが用意されている。このシーンの演出も、短いショットを編集でつないで誤魔化すいんちきアクションとは違う。不満がないわけではないが、米映画としては頑張っているといっていい。

ちなみにこの対決、最初の脚本にはなかったらしいのだ。「せっかく2人が競演するというのに闘わないなんてのはダメだ」という監督の意向を受けて変更したのだと聞く。演出の腕前はともかく、観客の求めるものを理解したイイヤツである。だって、これが本作最大唯一の見所なんだから。もしこれがなければ、いったい何のための映画なのか、ということになってしまうところだった。

本作では、カンフー映画やショーブラザーズ作品に対する大小数々のオマージュが捧げられているという。それは、監督の資質だけによるものではなく、脚本もまたその一端を担っているのである。これを書いたのは、おなつかしや、かつて『ヤングガン』シリーズで本物のビリー・ザ・キッドを描くことに尋常ではないこだわりを見せたジョン・フスコなのである。このひとは、高校中退後ブルース・ミュージシャンとして全米を放浪、などという不思議な経歴の持ち主で、これまでのフィルモグラフィが示すとおりネイティブ・インディアン関連(『サンダーハート』)や馬関連(『スピリット』、『オーシャン・オブ・ファイヤー(Hidalgo)』)など、特定のテーマにおいてマニア気風とこだわりを発揮してきた。それは分かっていたのだが、まさか、少林寺拳法までかじっていようとは!現在はタイを舞台にリメイク企画が進行している『Seven Samurai』の脚本を手掛けているというが、さて、どうなることやら。

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