3/22/2009

Yes-Man

イエスマン“YES”は人生のパスワード(☆☆★)



『Bring It On (チアーズ!)』、『Down with Love(恋は邪魔者)』で当方期待のペイトン・リード監督の新作である。ダニー・ウォレスという男の実際の体験談をネタにしたコメディで、主演は久々にストレートなコメディに帰ってきたジム・キャリーということで楽しみだった1本である。

日本語でイエスマン、といえば、上司に逆らわない人間の意になるが、この映画でいうYES-MAN は、日々遭遇する様々な選択の機会において、NOと拒絶するのではなく、とりあえず「YES」と云おう、ということである。自分のルーティーンに閉じこもることなく、周囲に心を開き、YES、ということで思いもよらない可能性が開けてくるという教訓を、なんでもYESといわなければ災厄に見舞われるという強迫観念に取り付かれてしまった男の顛末。それをアメリカ映画お得意のドタバタ騒ぎの連鎖で見せていく作品だ。

映画は十分に楽しめるものであったが、事前の高い期待は半分満たされ、半分裏切られた気分である。まあ、それほどまでに高い期待を持つほうに問題があるという気もするが、そういう期待に応えられる才能が集まっていると思うのだ。

この映画、確かに、ペイトン・リードのテンポが良い演出と音楽へのこだわり、それになによりもジム・キャリー久々の顔面芸を楽しめるという意味では期待を裏切らない。その限りにおいては普通に楽しめる作品である。細かいネタにはまればマニアックに楽しめるところもある。しかし、それも含めてどうしても予定調和の世界になっているのだ。「原作」を元ネタ程度にしか扱わずに自由に脚色するのはよい。(違うアプローチもあったとは思うが、これが悪いというわけではない。)エンロン事件ネタが爆笑ものだった『ディック&ジェーン 復讐は最高』でジム・キャリー作品を経験済みの脚本家ニコラス・ストーラーは、ジム・キャリーの得意技を十分理解して見せ場を盛り込み、いかにもジム・キャリーが得意そうなコメディ作品に仕上げている。しかし、それは、みなどこかで見たものの寄せ集めでしかなく、意外性や新鮮味に欠けている。定番というものは得てしてそういうものであるといえるのだろう。しかし、ペイトン・リードの才気なり、ジム・キャリーの実力なりというものを目にしてきて、ファンであるからこそ、これしきのことでは納得がいかない、工夫が足りないなぁ、という思いが強くなる。ジム・キャリーのキャリアだけ見ても、この路線ならば、10年前の『ライアー・ライアー』である程度極めているんじゃないだろうか。

本作の収穫は、ヒロインを演じるズーイー・デシャネルだろうか。『ハプニング』のときは特に強い印象は残らなかったが、本作ではどこかヘンテコな個性と可愛らしさが引き出されていてなかなか良かったと思う。「YES!」教(?)の教祖を演じた大ベテランのテレンス・スタンプは、例えば公開中の『ワルキューレ』なんかを見たあとではその落差に唖然とするのかもしれないが、昨年の『ゲット・スマート』のようにコメディへの出演も珍しくないし、スティーヴ・マーティン&エディ・マーフィ主演の『Bowfinger (ビッグムービー)』のとき、すでにして怪しい宗教の教祖を演じていたから、新鮮味のない選択のように感じられた。なんか、他に引き出しはないものかね?

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