8/16/2010

Zonbieland

ゾンビランド(☆☆☆★)


突然変異を起こした狂牛病由来の病原体が蔓延。人間性を喪失して人肉に群がるゾンビの国に成り果てた米国で、帰るべき場所を失った青年と行きずりのゾンビ・ハンター、詐欺師姉妹が西海岸の遊園地を目指す。英国産ゾンビ・コメディ『ショーン・オブ・ザ・デッド』の成功に触発された、「ロード・ムーヴィー」+「バディ・ムーヴィー」+「ボーイ・ミーツ・ガール」+「オフビート・コメディ」・・・with ゾンビ(風)。

ゾンビ(生ける死者)っていうか、、、設定上、これ、普通に生きてるじゃん!死体じゃないから体もしっかりしていて、獲物となる人間をみつけると、猛スピードで走る、走る(笑)

ここ数年来市場に蔓延している陰惨なホラー映画と違って、からっと陽性、楽観的なところが脳天気で素晴らしい。ゾンビ映画につきものの終末感とは不思議なくらいに無縁だし、ゾンビ映画のパロディとしてもこだわりがないので、そういう方面のファンにしてみれば中途半端な映画ということになるのだろう。とはいえ、この映画には背徳的な快楽がある。それは、中途半端だろうとなんだろうと、「ゾンビ」だというエクスキューズがあることによって、普通はやれない反社会的で残酷な行為をあれでもかこれでもかとやってのけ、それをあまつさえ、笑いのネタにしてしまうところに由来している。

だって、道の真中をこちらに向かってくる人を跳ね飛ばしたあげくに二度轢きするとか、剪定用の巨大バサミで大男の頭を切断するとか、頭の上から巨大なピアノを落として潰すとか、巨大なローラーで轢き殺すところを残り少ない歯磨きチューブを絞るところに例えてみせるとか、射的の的のように次々と撃ち殺すとか、トイレのタンクの蓋で殴り飛ばすとか、そんなこと、常識的に言えばやってはいけないことだし、笑ってはいけないことだろう。もっといえば、ゾンビに扮装しているだけの普通の人を間違って撃ち殺しちゃったら、さすがにまずいだろう。だけど、ゾンビだから。ゾンビ映画だから。殺らなきゃヤられるから。ってなわけで、やっちゃいけないことをやるところにある種の快感があり、笑いがある。

そこで、最強のゾンビ・ハンターと化したウディ・ハレルソンの存在価値がある。アカデミー賞にノミネートされた同じ年に、本作にも出演しちゃうあたりは授賞式の場でもネタにされていたが、いや、そういうところを茶化しながら褒めていたと解釈したい快演であり、怪演である。カウボーイ・ハットとブーツに身を固め、迫りくるゾンビの群れを恐れ知らずに片っ端から始末する大活躍はときに笑いを生み、ときに感動的なほどにカッコがいい。

主人公ら4人組がみんな白人系で、ゾンビにのっとられた米国で奮闘するという図式には、どこかで保守的なサブコンテクストが紛れこんでいるようにも見えなくもないが、おそらくは意図せざるものとして不問に付す。また、ビル・マーレー役で出演のビル・マーレー(本人)が面白過ぎて悶絶(←これを見たくて劇場に足を運んだようなもの)。・・・さすがに映画のテンポからなにから全部を壊してしまうのだが、まあ面白いから許す。

追記:
ビル・マーレーのネタ、場内で反応が薄かったのでチと説明すると、興行・批評とも不振だった『ガーフィールド』実写版でCGI猫・ガーフィールドの声を当てたのがビル・マーレイな(彼の声を聞くため字幕版をやってる劇場を探すのに苦労したこと思い出したよ・・・)。クレジットのあとの「おまけ」でハレルソンが云おうとした台詞「In the immortal words of Jean Paul Sartre, 'Au revoir, gopher'.」は、『ボールズ・ボールズ(Caddyshack)』でモグラ爆殺をしようとするビル・マーレーの台詞で、本人に手本を見せてくれよ、とせがんでいるわけだ。

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