8/01/2010

Brothers

マイ・ブラザー(☆☆☆)

原題「Brothers」。『マイ・ライフ』『マイ・フレンド・フォーエバー』『マイ・ルーム』『マイ・フレンド・メモリー』に続く、感動の「マイ」シリーズ第5弾(嘘) ←ネタが古いよ

優秀で信頼厚い家庭人の兄、屈折した弟。海兵隊員である兄はアフガンに出兵していき、まもなくして訃報が家族のもとに届く。弟は、残された兄の家族と関係を深めていくが、実はアフガンで捕虜となり、家族のもとに戻るために究極の選択を迫られた兄が別人のようになって生還したことで、悲しみを乗り越えて平穏を取り戻したかのように思えた家族の風景に不協和音が生じるようになる。

デンマーク映画『ある愛の風景』(スザンネ・ビア、2004)の米国版リメイクである。脚色は『25時間』、『トロイ』、『ウルヴァリン』のデイヴィッド・ベニオフ、監督は『マイ・レフトフット』、『父の祈りを』等のジム・シェリダン。

リメイクであるとはいえ、題材として、むしろ今の米国で作られることを自然に感じ、違和感がない。まあ、この内容を、外国(語)映画を見ない米国人に見せるためのリメイク、という側面もあろう。

もちろん、これはアフガン対テロ戦争の傷、というだけの話ではない。2つのドラマがここにある。ひとつは、優秀な兄と、その影で父親にも認められず、兄に劣等感を抱き続けた弟のあいだの複雑な感情を描くドラマ(タイトルであるところの "Brothers")。もうひとつは、戦場に赴いた善意の人間が、壮絶な経験の末、人間性を喪失したり、大きな心の痛手を負ってしまうという戦争の非人間性を告発するドラマ。タイトルからすれば、「兄弟」のテーマがもっと前面に出てきても良いと思うのだが、本作は「兄弟」と「戦争」の2つのテーマのどちらかに重心をおくという選択をしきれておらず、結果としてどちらのテーマにおいても深みを出し切れていない。まあ、どちらも普遍的なテーマであるから、ありきたりの踏み込み方では新鮮味を欠いてしまうのも致し方ないだろう。

本作の一番の魅力は弟:ジェイク・ギレンホール、兄:トビー・マグワイアという、ありそうでなかったキャスティングである。当方、この二人のことを「どこかで似た雰囲気だが陰と陽の対」になる俳優として考えていたところがある。多分、ジェイクには『ドニー・ダーコ』、トビーには『サイダーハウス・ルール』などで売り出したころの印象が残っているからだと思うのだが、この二人が兄弟を演じるというのは、それだけでとても魅力的なアイディアだ。しかも、「陽」の側であるトビー・マグワイアが戦場での経験により豹変する役である。トビー・マグワイアが激痩せで熱演(ゴールデングローブ賞ノミネート)しているが、彼が演じるからこその痛々しさがよく出ていると思う。

一方、「フットボール選手だった兄と結婚した元チアリーダー」を演じているのがナタリー・ポートマンであるが、田舎町(撮影はニュー・メキシコ)の元チアリーダーとしては、彼女からにじみ出る知性と優等生ぶりがそれ「らしく」ない。彼女も役の幅が広がってきたが、似合う役と似合わない役があるのは否定できないところだ。

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