7/03/2011

Thor

マイティ・ソー (☆☆☆)


『アイアンマン』シリーズ、『インクレディブル・ハルク』に続き、マーベル自身が自らのコミック世界を作品横断的に映画化する巨大プロジェクト(マーベル・シネマティック・ユニバース)、4作目にして3人目のヒーローは、『アイアンマン2』のラストで予告がなされていたとおり、北欧神話に題材を求めたファンタジー寄りの『マイティ・ソー』だ。(ソーは、Thor、トールの英語風カタカナ表記。)このあと、同じく『アイアンマン2』のなかで言及のあった『キャプテン・アメリカ』が待機中で、その次はヒーロー大集合の"The Avengers" の予定だという。どうせしばらくマーベル祭りが続くのだから、その都度出てくる新作を、ひと通り楽しんでおくのが吉だろう。

(地球を含む)9つの世界を束ね、平和を維持してきたアスガルドの王オーディンの息子、ソーは、偉大な父王の後継を約束されていたが、向こう見ずで傲慢な性格ゆえに長年の平和にヒビを入れかねないトラブルを起こし、能力を剥奪された上に王国から追放され、ニューメキシコの片田舎に落ちてくる。そのころ、ソーの義弟であるロキは兄への嫉妬から敵国と通じ、王座を手に入れようと画策をしていた。王国とソーの身の上に危機が迫る、、、という話。

本作のストーリーは、基本的にはファンタジー世界における陰謀と裏切りの宮廷劇である。もちろん、広い意味では悪から世界を救うスーパー・ヒーローの話でありつつも、「正義のヒーローが悪者や犯罪者をボコって治安や平和を維持する」話とは少々毛色が異なるものになっている。それが理由なのだろう、監督に起用されたのはケネス・ブラナーという変化球。シェイクスピア俳優として有名で、その映画化も多く手がけてきた英国的知性に、ある意味で筋肉バカなアメコミ映画を委ねるという発想が出てくるところが面白い。それに対し、大バジェットのVFX映画から他では経験できないものを吸収しようと貪欲に企画を受けるケネス・ブラナーも大したものだ。

映画の内容は、とりたてて何かをいうほどのものでもなく、昨今のマーベル映画の家族で楽しめる軽いノリを継承している。地球に落ちてきたソーの頓珍漢な行動や、こんなファンタジー系のヒーローに対する違和感みたいなものを自己言及的に軽いコメディとして見せるあたりの手際は良いし、一見筋肉バカでも血統なりの人の良さを素直に演じて見せるクリス・へムズワースも爽やかで嫌味がない。アクションもオーソドックスにきちんと撮れている。先行・並行するマーベル映画世界と絡む細かいネタも盛り込まれており、気がつけば気がついただけニヤッとできるかもしれないし、逆に、商売っけを感じてうんざりするかもしれない。それが仕事とはいえ、こういう商業作品をさらっと撮れるケネス・ブラナーの器用さには驚かされるし、続編の監督を断る気持ちも十分に理解できる。

神話的・宇宙規模のスケールと言っても所詮CGI、セットにもカネがかかっているのだろうけれど、作り物の安っぽさは否めない。地球での舞台はニューメキシコのしょぼい田舎町、へんてこりんなロボット一体を撃退するだけなので、なんだかちっちゃな映画のように思えてしまう。"The Avengers" に向けた顔見せ、前座だと割りきって楽しむのが良いだろう。例によって一番最後にサミュエルL・ジャクソン登場の、"The Avengers" に向けた予告が入っている。また、劇場によっては、上映前の予告編で、ジョー・ジョンストン監督による『キャプテン・アメリカ:ザ・ファースト・アベンジャー』も観ることができるかもね。j

0 件のコメント:

コメントを投稿