7/30/2011

Transformers: Dark of the Moon

トランスフォーマー:ダークサイド・ムーン(☆☆)


あー、これでひとまず終わってくれる、というヘンな意味での安堵を感じるシリーズがあるとすれば、来年完結予定のトワイライト・サーガと、これ、トランスフォーマーが双璧。最初はそれなりの期待感を持って劇場に向かうも、スクリーン上で展開される惨憺たる狂騒に唖然とする。あるいは、そうなることを半ば予期していても、、一応、イベント的な観点から見ておかないわけにはいかない気がする。というわけで、わざわざ前2作をTV放送で見なおしてから劇場に足を運んだ。(いや、前作までのストーリーなんかスッカリ忘れていたよ。)

しかし、2D、 3D 両方とも見たうえで云うのだが、いやはや、これはゴミに例えるなら、ただのゴミではなくて、どうしようもない粗大ゴミの類だな。

さて、今回の話は、1960年代初頭に月の裏側に墜落した異星由来の物体をめぐり、月への有人飛行を目指すアポロ計画が立ち上がったという裏エピソードを起点とし、前2作では全く触れられなかったディセプティコンの巨大な陰謀、人類の存亡をかけて人類・オートボットとディセプティコンが激突するという筋立てである。クライマックスにはシカゴを舞台とし、延々1時間は続く大規模な市街戦が待っている。

月への有人飛行計画が急速に立ち上がり、その後、止まってしまった理由を異星人に関わる情報の隠蔽工作とする発端部分は、ピラミッドが太陽破壊装置だったという話よりは面白いし、実際に月に立ったバズ・オルドリンご本人を特別出演的に引きずりだしてくるあたりまではよいのだが、せっかくの歴史改変SFの趣も、その後の狂騒に急速に埋没してしまう。

いろいろ詰め込みすぎてよくわからなくなった前作よりはストーリーが整理されているが、それも気休め程度の話である。

このシリーズ、もともと機械生命体同士の争いと、国家や軍隊といったレベルの話と、高校生~新卒社会人程度の主人公と身近な人々の話をどのように絡めて一つにしていくかという部分が大きなチャレンジになっていたが、今回もそのあたりに無理やり感が漂っていて、成功しているとは言い難い。もっと頭を使って欲しいところだ。

意味もなく長尺のなる理由の一つが先に書いた3つのレベルの話をうまく練り上げられていないことであるが、他にも脱線やムダも多いのが、このシリーズの特徴である。今回はそれに加え、トラブルメイカーと化していたミーガン・フォックスを解雇した後遺症もある。新しいヒロインを導入するためだけのまどろっこしい手順やエピソードは見ているだけで疲れてしまう。

マイケル・ベイの演出は、さすがに3Dを意識したからか、カメラぶん回しや短いカットは減って見易くなった。が、止まることを知らず動きまわるカメラと笑えないコメディ演出は相変わらずである。注目の「3D映画」としてどうかといえば、確かに3Dカメラで撮影したショットも多いようだし、3D化が容易なCGIで描出したオブジェクトも多いため、急造の変換3D作品より「立体感」は感じられるのは事実である。そうはいっても、その使い方という意味では何ら新鮮な工夫はなく、全くもって面白くない。3Dに最適な演出のあり方はもっと深く追求されて然るべきだ。

この手の大規模で複雑なプロジェクトの陣頭指揮にあたって映画を完成させる能力も含めて「監督」の資質を問われるのであれば、本作の製作過程では大きな事故が複数回報じられているとはいえ、マイケル・ベイの才能を疑う理由は全くない。ただ、完成した作品が面白いかどうかは別の話だということは、まあ、改めていうまでもないことだろうね。


ところで、アニメ版での縁によるものというが、今回登場するキャラクター、「センチネル・プライム」の声をレナード・ニモイが演じている。それにちなみ、映画の前半でスター・トレック(TOS)のエピソードをTVで視聴しているシーンがあったり、主人公が車のギャラリーを「エンタープライズみたい」と口走ったり、「カーンの逆襲」における有名な台詞 "The needs of the many outweigh the needs of the few"  をセンチネルに云わせたりするお遊びがあったりする。そういえば、今回はクレジットされていない前2作の脚本家コンビは、タチの悪いトレッキーだったな。

0 件のコメント:

コメントを投稿