2/12/1999

Blast from the Past

タイム・トラベラー 昨日からきた恋人(☆☆☆)

60年代初等、米ソ冷戦、キューバ危機、核戦争の恐怖の時代だ。ちょっとした勘違いから自宅の地下に作った核シェルターにもぐった一家は、産まれた赤ん坊に希望を込めて「アダム」と名づけた。35年の時が流れ、閉ざされた世界で生きてきた何も知らない好青年アダムが地上に出かけ一人の女性と知り合う。その名も「イヴ」だ。

一昔前、『ポリス・アカデミー』で一斉を風靡したヒュー・ウィルソン監督の、ナンセンス・ロマンティック時代錯誤コメディである。まあ、この人が監督するんだから、ロマンティック・コメディとはいってもドタバタ風味なのは言うまでもない。でも、単にそれだけでもない拾い物。

主演のカップル、アダムとイヴにブレンダン・フレイザーとアリシア・シルバーストーン。ブレンダン・フレイザーっつったら、もう、大きくて健康的な体と、比較的整った顔立ちで、おとぼけ、すっとぼけというキャラクターが持ち味だから、これ以上にはまったキャスティングはないだろう。

一方のアリシア・シルバーストーンは、いかにも現代っ子なんだけど、その実は裏側は純真なんだよね、という、これまた『クルーレス』に由来する彼女のイメージの延長線上のキャラクター。この人、あんまり演技が上手くないんだけど、ブレンダン・フレイザーの「ボケ」に、どう返していいのかわからず、ただただ呆れているリアクションがなんだか可愛い。

でも、本当に笑わせてくれるのは、主演カップルじゃなくて、そもそものきっかけを作った勘違い両親のほうだ。なにせ、主人公の両親を演じているのはクリストファー・ウォーケンとシシー・スペイセクなんだ。アカデミー賞受賞経験もあるこの二人・・・というより、二人揃うと、『デッド・ゾーン』の超能力者と、『キャリー』のテレキネシス少女という恐るべきカップルなんだよね。こいつはスティーヴン・キングも予想しなかっただろう。作品の裏の意図として、こんな二人の珍演・怪演をみせるっていうのがあったんじゃないか。本作の中で一番笑ったのは、35年間を地下で暮らしたことが、単なる自分の単なる勘違いだったことを知ったときのクリストファー・ウォーケンのリアクションだ。

映画全体でみると、本筋に入るまでの導入部分が長いんだが、名優というか怪優カップルのボケ演技で楽しませてくれるので、まあいいかという感じ。本筋に入ってからは時代のギャップや勘違いで笑わせるドタバタが展開されるが、繰り出されるギャグの質はまちまち。「I love Sushi」という台詞に反応したブレンダンが、発音が似てるってだけで「I love Lucy !」と返すギャグで笑えって云われてもな。

ただ、表面上はドタバタやっているんだけど、主演二人の気持ちが通っていくプロセスや、ヒロインの心情の変化をきちんと積み上げていくし、伏線を張りと回収、つじつま合わせなんかを律儀にやっていて、そこそこちゃんとしたロマンティック・コメディになっていたりするのは意外である。監督の個性を思えば、もっとハチャメチャな方向に持って行っても面白かったんじゃないかと思うが、どこか、この作品の底に流れる心優しさにホロリとさせられるものがある。

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