2/05/1999

Simply Irresistible

バニラ・フォグ(☆☆)

主人公がNYの下町で母親から引き継いだ小さなレストランは経営危機に瀕していた。そんなおり、不思議な「カニ」(?)の取り持つ縁で、高級デパートの若きエグゼクティヴと恋に落ちる。主人公の作る料理と恋の魅力は抵抗不可能(irresistible)だった、という、なんだかへんてこりんだが、一応、ロマンティック・コメディ、な感じ。

現在、全米第5のネットワーク、WB系で放送中の人気番組『バッフィ・ザ・ヴァンパイア・スレイヤー』で人気の出たサラ・ミシェル・ゲラー主演作。相手役に、元「ヤング・インディ・ジョーンズ」のショーン・パトリック・フラナリー。なんだかTV的なスケールだな。

作品の雰囲気だが、基本的にバカ映画だと思ったほうがいいんじゃないか。ロマンティック・コメディといっても幅広いけれど、一番近いのは『マネキン』とか、あんな感じ?過剰演技のコミック的演出だ。最初は「コミカルなファンタジー」を目指しているのかと思ったら、実は大バカなノリで、思わず椅子からずり落ちたよ。

もちろん、こういうのもキライじゃないんだけどな。

基本の筋立ては、シンデレラものの変種である。何しろ「魔法」がかりなので気持ちいいくらいに偶然が重なってあっという間に恋に落ちる二人。主人公は急に料理の腕前が上達し、彼氏のデパート内にある高級レストランのシェフに抜擢される。定番どおりに持ち上げ、いったん落とし、最後は幸せな結末にむかって一直線。

この映画では「魔法にかかったような料理」が話の核だが、これを口にした人々がメロメロになる描写はかなり妙ちきりんで、なんでこうなっちゃったんだろう、と不思議に思う。よくある料理マンガで、料理を口にした人が涙流して感動したり踊り出したりするようなシュールな世界を、そのまま実写映画で見せられてしまうようなものだ。それが、段階を追って次第にエスカレートしていくんだからスゴい。

それに通ずるものなのだが、劇中、高級レストランのオープンにあたって、床の内装が「MGMのミュージカルみたい」という台詞がある。そうだ、これは丁度ミュージカルの非現実感やファンタジー感、唐突に唄い出すような(奇妙な)感覚だろうか。それが、なんだか憎めない理由なのかもしれない。そういうの、好きだもの。

整った顔立ちのショーン・パトリックだが、これをみて意外にコメディが合っているかもしれないと思った。一方ヒロインのサラ・ミシェル・ゲラーの役回りは、サンドラ・ブロックあたりが得意そうなキャラクターだ。少々安っぽいカンジがするのがこの人の欠点だが、小柄に見える体格を活かして溌剌と演じていて気持ちがいい。まぁ、そろそろTVから映画へのトランジションに成功しそうな気配がある。

「恋のきっかけを作る不思議な男」についても、「謎のカニ」についても、とくに種明かしをしようという気がないらしい。普通だったら、なんじゃそりゃ、というところ。本作が監督デビューになるマーク・ターロフ、本職はプロデューサーらしいのだが、なんだかしっちゃかめっちゃかで、こちらの才能はあまりなさそうだ。

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