7/09/1999

American Pie

高校3年の卒業を間近に控えた男たちが、せめて最後のプロムまでに童貞を捨てなければ話にならないと、それぞれ相手の獲得や説得に奮闘する、青春セックス・コメディ。ジェイソン・ビッグス、ミーナ・スヴァリ、クリス・オーウェン、クリス・クライン、アリソン・ハニガン、タラ・リード、シャノン・エリザベス、ショーン・ウィリアム・スコットら若いスターのアンサンブルに加え、主人公の父親役でユージーン・レヴィが出演。ポール・ウェイツの監督デビュー作品である。
 
面白いんだ。面白いんだけどね。まあ、高校生がアルコールを飲み、セックスに奔走するという内容自体を不道徳だとかいうつもりは毛頭ないのだが、大笑いをしながらも、ちょっとどうかなぁ、と思ったのは事実なんだよね。

ここのところ、ハイ・スクールものが数多く作られていて、80年代(つまりはジョン・ヒューズ)以来のちょっとしたブームになっている。その一方で、昨年のサプライズ・ヒットとなった『メリーに首ったけ』が図らずも「解禁」した、下劣でも笑えれば勝ち、みたいなトレンドがある。その2つが交差してできた安易なティーンズ・セックス・コメディだと感じたのである。なんだか、カネ勘定が先に立ったようなイヤラシさとでもいうのか。

でも、よくよく見ると、この映画、同種の先例である『ポーキーズ』のような単なる性春のドタバタと違って、ティーンエイジャーの切実な悩みや興味関心を描いた青春映画としてもかろうじて成立している。どこかにハートがある。何度か繰り返し見ているうち(←繰り返し見るな!)ちょっと、印象が変わってきた。

もちろん、簡単には忘れられないほどに強烈で、愚劣で、下劣なギャグもたくさんある。全てのネタが、徹頭徹尾セックスがらみに落ちていく。しかも、少々心配になるくらいに脳天気。だから、こういうのが嫌い、という人は見ないほうがいい。

でも、キャストを見れば分かるように、これだけたくさんのキャラクターを出しておいて、濃淡はあれどそれぞれのキャラクターが立っていて、映画の中でうまく活かされているってのは、作り手のキャラクターたちへの愛情なんじゃないか、とも思う。主人公のみならず、脇役にもいいエピソードが振られているし、きちんと活躍の場がある。

最初は、作り手が登場人物たちと同じ視点ではしゃいでいるようにしか思えなかったが、どうやらそれは私の見た手違いで、バカで軽薄な行動も「誰もが通って来た経験」として、説教するでもなく、広い心で許容しているのだなぁ、と思うようになった。丁度、ユージーン・レヴィ演じる人が良いが間の悪い父親がそうであるように。

そうそう、そのユージン・レヴィだが、さすがベテランである。主人公の男親として非常に理解があるのだが、いつも間が悪いところで登場し、息子ともども非常にバツの悪い思いをする羽目になるのだが、絶妙の台詞回しと表情で、もう、笑いすぎて死ぬかと思ったよ。後世まで語り継がれるレベルの珍場面、名演技だ。このためだけでも見る価値がある映画かもしれないなぁ。

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