7/28/1999

Deep Blue Sea

ディープ・ブルー(☆★) 

遺伝子治療の鍵となる生体物質をサメの脳から効率良く取り出すため、秘密裏に脳を巨大化させられたサメたちが、洋上に建設された実験場で人間たちに対して牙を剥く。ヤツらたちの目的は一体なんなのか。レニー・ハーリン監督3年ぶりの新作にはサミュエル・Lジャクソン、ステラン・スカルスゲールドらに加え、LLクールJ、サフロン・バロウズらが出演。

監督と脚本に、映画に出てくるミュータント・シャーク程度のIQを期待するのは、多くを求めすぎなのだろうか。企画も企画だが、出来映えもヒドいものだ。

要するに3頭のミュータント・シャークを相手に、洋上の実験施設内でエイリアンをやろうと云う中学生でも思いつきそうな企画なのである。それゆえなのか、そのくせなのか、一生懸命大作ぶろうとするあたりがそもそも勘違いだ。

さんざん勿体つけておいて、物語も中盤になってから「副作用としてサメが賢くなったのよ」といわれても、ね。

古いアイディアのリサイクル名手であるマイケル・クライトン程度の知恵がないなら、いっそ、「大きいサメがいて、そいつが何故か賢い」とか、「軍がサメの軍事利用のために」とか、定番のご都合主義で押しとおした方が、良かったんじゃないだろうかね。

まあ、いずれにせよ、ハーリンはそういう「賢いふり」をした部分に興味があるわけがないから、その辺の描写は全くおざなりである。派手に爆破さえすれば、面白くもへったくれもないストーリーや学芸会並みの演技も、矛盾と謎に満ちた小道具の出し入れも、ギャグでやってるとしか思えない仰々しい演説さえも忘れてもらえるはずだと信じている、典型的正調ハーリン節ここにあり。久しぶりに監督できて嬉しそうにしているハーリンの顔が目に浮かんでくるようだ。

この映画、観客の意表を突くつもりなのか、総じて安物なキャスティングに紛れ込んだ演技力のある役者をさっさと退場させたりする。それも一つの手だとは思うが、ここでは明らかな計算違いだった。曲者や求心力のあるキャラクターを失う度、映画は容赦なく退屈になっていく。そんななかでは飄々としたキャラクターでコックを演じるLLクールJが拾い物。あと、いついかなるときでも目の玉をひんむいて演説口調のサミュエル・ジャクソンには大いに笑わせてもらった。

しかし臆面もなく『ジョーズ』もどき聴かせてくれた音楽担当のトレヴァー・ラヴィンには頭が下がるね。

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