8/19/1999

Bowfinger

ビッグ・ムービー(☆☆☆☆)

友人の会計士が仕上げた一冊のエイリアン侵略ものの脚本を読んで感動した3流プロデューサー兼ディレクター。自分の家に出入りする3流役者やスタッフをかき集めたが、成功させるには大スターも必要だ。手持ちの金もない。そこで一計を案じ、大スターが知らないまに、無許可でその出演シーンを撮影してしまおうというゲリラ撮影を決行することになる。

この作品は、もう、スティーヴ・マーティンとエディ・マーフィの初共演、というのが売りものだろう。脚本はマーティン自身が手掛け、監督は、彼と4度目の顔合わせになるフランク・オズ。

一体どんな映画かといえば、『エド・ウッド』から感傷を引き、代わりに「騙し」のスリルを加味して突っ走る。そんな感じである。ともかく、ここ数年のスティーヴ・マーティン主演作としては最高の出来だ。

大スターを2人並べてはいるが、なんといっても、これは脚本も手掛けたスティーヴ・マーティンの映画である。作品の隅々まで、彼らしさが行き渡っているのだ。なんといっても脚本の巧みさ。アイディアに溢れたプロット、小技大技とそれを繰り出すタイミング。伏線は忘れたころにきちんと拾うし、自分と共演者の個性を活かしきる設定もそうだし、ダイアローグも相当練られている。

素晴らしい脚本を得て、パラノイアぎみのスターを含めた2役演じるエディ・マーフィも、近作は一体何だったのかと思いたくなるイキの良さを見せてくれる。客演ということで肩の力が抜けたのもあるのだろう。

それに、ヘザー・グラハムだ。ファニーフェイスでコメディセンス抜群の彼女だが、これまでの作品から、「清純派」のイメージと「セクシー路線」の両方のイメージを持っている。それを逆手に取り、頭空っぽなスターを夢見る田舎娘というキャラクターで登場しておいて、観客の先入観を次々に気持ち良く裏切っていく面白さ。劇中映画の演技で身体をクネクネさせる珍妙な動きも悶絶もの。コメディ映画のヒロイン、かくあるべし。

導入のきどったクスグリから、ゲリラ撮影がはじまってからのスピード感溢れるノンストップのドタバタまで、フランク・オズが緩急つけながら、陽性の爆笑映画に仕上げてくれた。映画作りへの愛と情熱を隠し味にしているのは間違いなく映画好きの琴線に触れる。夢は叶うという隠しメッセージもいかにもアメリカ。感傷で落とさず笑いで締めるのも、ハリウッド・コメディの鏡といえるだろう。

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