8/12/1999

The Thomas Crown Affair

トーマス・クラウン・アフェアー(☆☆☆)

『華麗なる賭け』の現代版リメイクである。NYに住む富豪トーマス・クラウン。手に入らないものはないような彼が趣味とするのは高価な美術品を盗み出すこと。美術館からモネの逸品をまんまと盗み出した彼に疑いの目を向けたのは保険調査員のキャスリーン・バニング。絵を取り戻すためなら何でもするという彼女。相対する二人だったが、個人的な感情が途中で一線を超えてしまう。

今回の主演はピアース・ブロスナンとレネ・ルッソ。監督はジョン・マクティアナン。オリジナルの主演だったフェイ・ダナウェイもちらりと出演している。

初代ボンドショーン・コネリーが主演するオールド・ファッションな泥棒サスペンス映画がスマッシュヒットを飛ばしたこことも記憶に新しいが、こちらは現役、5代目ボンドが主演。恋の駆け引きが柱とし、サスペンスはお洒落でゴージャスな恋の舞台装置といった雰囲気の作品である。少しだけだが、マクティアナンに復調の兆し?なのか、なかなか楽しめる1本になっているのは間違いない。

映画はNYのメトロポリタン美術館らしきところから印象派の逸品を奪い出すシークエンスで幕を明ける。大掛かりなプロの強盗団が登場し、壁の裏側で次々と細工をしていく描写が『ダイハード』の自己パロディ的でニヤリ。軽妙なジャズ調の音楽にも支えられて、まんまと作戦成功と相成るまでが実にお洒落でテンポが良い。音楽はビル・コンティ。

主人公と女捜査官の駆け引きも快調。ただ、それがロマンスに発展するあたりからが少々かったるい。中だるみ、だな。クライマックス、警官たちの監視された状態での大一番からエンディングまでが、派手な仕掛けに頼らず小気味良い。

この映画で気になることは、冗談にしか思えないぐらい露骨なプロダクト・プレイスメントである。これはスポンサー企業の製品などを画面のなかにさりげなく写し込む広告手法だが、この作品ではレネ・ルッソがペプシ・ワンをロゴが良く見えるアングルで飲み干したり、ヨットレースで相手の帆にルーセント・テクノロジーのロゴが入っていたり、ピアスナンがプレゼントに買い求めるのがブルガリの宝飾品だったりと、やりたい放題で、『トゥルーマン・ショー』のなかでやっていたパロディを見ているようだ。もしかして、頭にきた監督が悪意をもってわざとやったのじゃないか。

演技面では、なんといってもアクション派女優レネ・ルッソの、これが彼女の代表作と呼びたくなる颯爽とした格好良さと大胆さ。仕事を超えた個人的な感情で動揺する心をきっちり見せる演技力。対するブロスナンはアッサリしすぎで少しモノ足りない気もしたのだが、もし彼が「濃い」役者だったら、この映画、ちょっと蒸し暑くなり過ぎていたかもしれない。

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