11/21/2008

P.S. I Love You

P.S. アイ・ラブ・ユー(☆☆★)

『300』でのマッチョぶりが記憶に新しいジェラルド・バトラーと、『ミリオンダラー・ベイビー』でのタフさが目に焼きついたヒラリー・スワンクに、それぞれのイメージを覆すスウィートなロマンスをやらせようという企画そのものについては、なかなか良いと思うのである。もちろん、二人に凶暴なカップルの暴走とか、お互い死ぬまで譲らない離婚闘争(『ローズ家の戦争』かよ!)とかをやってもらっても結構だと思うのだが、この秋のもう一本のほうのロマンス映画のカップル(リチャード・ギア&ダイアン・レイン)のように手垢のついた予定調和とは違った新鮮さがあるではないか。

そして、ストーリーである。先立ってしまった夫が自分の死後の妻を思い、先回りをしていろいろな手配や仕掛けを済ませた上で10通の手紙でメッセージが届くように取り計らう。死んだはずの夫の指図で行動をするうち、夫のいない新しい人生に踏み出していけるようになる妻。思いを残した死人があれこれ残されたものの世話を焼くファンタジーな話も過去にはあったが、これとは似て非なる「死者が残した手紙とその計画」というアイディアはロマンティックだし、面白い。

しかし、この映画、どうにもピリッとしない。脚色と監督を兼ねるのはリチャード・ラグラヴェネーズ。まず、導入が悪い。2人の仲の良い様子はどうせ回想を挟み込んだ展開になるのだから、冒頭で描かなくともよかろう。また、主人公の姉妹に関わるエピソードも賑やかしのつもりかもしれないが、本筋の邪魔である。さらに、主人公を脇で見ている男との関係を描くエピソードは、「主人公の自立」と「死者の思い出との決別」という観点で柱にしたいのか、単なる付け足しなのか、描き方が中途半端。それに「10通の手紙が届く」というのだから、せめて、どのメッセージが何通目かわかるように、物語にアクセントをつけながらリズムを刻んでいけばもう少しテンポよく仕上がったんじゃなかろうか。この程度の内容の映画で2時間を越えるのは出来の悪い証拠と考える。

脇の出演者では相変わらずキャシー・ベイツが巧い。リサ・クドローはお笑いパートで、ジーナ・ガーションやハリー・コニックJrにはには見せ場なし。こうしてみると意外にも豪華キャストだったのね。無駄使いな感じだけどさ。

最後に文句。ポスターにある、『プラダを着た悪魔』プロデューサーX『マディソン郡の橋』脚本家って何よ。近寄ってみてみたら小さな字で名前が確認できるというならわかるけど、主要スタッフの記載のない看板やポスターばかりなのな。最近、「XXのスタッフが送る」とか、わけのわからん宣伝がまかり通っているのだが、名前を書きなさい、名前を。あと、日本版主題歌とかいって、音楽を勝手に差し替えるのやめてくれないかな。ディズニー・アニメの日本語吹替版じゃないんだから。ターゲットとする女性観客がそんなのを喜ぶと思っているのが、いったい「侮辱」といってよいのか、もしかして、ほんとうにそんなんで喜ぶほど観客層の頭がユルいのか、どっちが真相なのかは知らないけどね。

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