11/23/2008

Tropic Thunder

トロピック・サンダー史上最低の作戦(☆☆☆★)

『ズーランダー』を見るために初日のシネパトスに並んだ当方としては、ベン・スティラーひさびさの監督作がそれなりの規模で全国ロードショーされると聞いただけで嬉しくてしょうがないわけで、実際に見にいってみたら、このひとがアクション・シークエンスからスペクタクルなシーンまで、(支えるスタッフがしっかりしているとはいえ)意外や意外、監督として並外れた器用さをもっている事実まで確認できたわけで、もうこれ以上ありがたいことはない。足りないことがあるとすれば、オーウェン・ウィルソンの不在だが、(たぶん代打で出演だと思われる)マシュー・マコノヒーも面白かったので、それでよしとしたい。TiVoだよ、TiVo!契約は守らせたぜっ!

宣伝で勘違いされていると困るのだが、これはかつてZAZがやっていたようなナンセンスものでもないし、たとえばScary Movie シリーズがやっているような単純なスプーフもの(=おバカ映画)ではない。これは、時にブラックな皮肉の効いた風刺劇とでもいうようなもので、その対象は特定の映画というわけではなく、ハリウッドの映画作りと俳優を中心に、エージェント・プロデューサーなど、その周辺の人種を笑いのめそうというのだから怖いもの知らずである。俳優とエージェントについてはそれなりに救いもある描き方がなされているのだが、ダイエット・コーク中毒のハゲデブ(ただしチビではない)ハーヴェイ・ワインスタインをメインに創作された大物プロデューサーの描写だけは容赦がない。それをハゲ&デブ・メイク(チビはメイクではない)で真剣に熱演する某サイエントロジー信者の、目が笑ってないあたりの恐ろしさときたら、もう、なんと表現したものか。このひと、結局、この映画をさらってしまった。

まあ、俳優の描き方には救いがあるとはいうものの、スタローンやチャック・ノリスといった筋肉俳優や、ダニエル・ディ・ルイスやラッセル・クロウのような演技派俳優は笑って済ますことができたとしても、意外に冗談の通じないやつであることがばれてしまっているエディ・マーフィは多分、怒るだろうな、などと想像するのもまた楽しかったりする。当然、期せずして人気大爆発のロバート・ダウニーJrの、このコメディに出自をもつ超絶演技派俳優の力技を堪能するだけでも入場料金の元はとれる。もう、いかようにでも楽しめる作品である。

もちろん、ベン・スティラーのギャグのセンスは相変わらず冴えている。しかし、ネタも濃ければ見せ方も濃く、東南アジアのジャングルを舞台にむさくるしい男たちが出てくるという画面もまた濃いため、分かる・分からない以前に、合う・合わないというファクターはあるので誰にでも薦められるかというと難しいのだろう。また、さすがに1億ドル級の大作とあって、『ズーランダー』にあったようなリラックスした気楽なくだらなさを積極的に許容する余裕には欠けるところが少々息苦しくはあって、その辺が少々物足りない。次は、もっと小さな予算の気楽なやつで一発、お願いしたいよね。

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