12/25/2010

Burlesque

バーレスク(☆☆★)

田舎町からL.A.に出てきた小娘が魅入られたショークラブ「バーレスク」の舞台で、持ち前の実力を活かしてスターとして成功していく話に、作曲家兼バーテンダーとの恋愛や、嫉妬深い先輩スターとの軋轢、地区の再開発を狙う敵対的買収者からクラブを守り再生する話を絡めたストーリー。ご存知、クリスティーナ・アギレラ主演作。予告を見たときの地雷臭は相当なものだったので懐疑的だったが、少なくとも、「シンプルな筋立てを華やかなショーでつないだミュージカル風味の作品」という狙いを外してはおらず、ゴージャスでセクシー(というか少し下品)なダンスの振り付けもスクリーン映えし、多くを求めないのなら楽しめる1本には仕上がっている。小さな役とはいえ(『キャバレー』の舞台で評判をとった)アラン・カミングの出演があるのも、作り手の狙いや嗜好の表れだと思えば好印象である。

この映画の一番の不満は、本来一番の肝であるべき楽曲の問題であろう。アギレラが劇中で歌う(本人もクレジットに名を連ねた)楽曲が、どれもこれもシングルヒット狙いなのか、今風にリズム主体で、ミュージカルの楽曲としての魅力を全く持ち合わせていない退屈なシロモノだ。ビジネス上の理由なのだろうとは想像するが、なによりこれが映画であり、ミュージカルであるということを念頭におけば、こういう楽曲にはなるまい。逆にいえば、それ以外の楽曲はなかなか良く出来ているといえる。シェールが歌うナンバーなどは、彼女の歌唱力も込みで大いに見所、聴かせどころで、それ故にアギレラの楽曲の安っぽさがいかにも残念だ。

脚本の問題でいえば、シェールの回りの男性キャラクターがうまく整理されていないことが気になった。演出家であり長年にわたる理解者として配置されたスタンリー・トゥッチのほか、夫役のピーター・ギャラガーが出てくるのだが、この物語上の位置づけが中途半端で、何がやりたかったのかさっぱりわからない。ビジネス面を担当しているように見えるのだが、敵対的買収者とつながる悪役という位置づけではないし、シェールの味方・代弁者として采配を振るうでもなく、無能にも右往左往しているだけ。キャラクターとして、必要性も必然性もないだけでなく、シェールともあろう女主人がこの男のどこに惹かれたのかさっぱり分からないのは致命的。いっそこの二つのキャラクターをスタンリー・トゥッチの側に寄せて集約してしまったほうがスッキリしただろう。

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