12/24/2010

Tron Legacy

トロン・レガシー(☆☆☆)。

なんと、28年ぶりの、正統な続編である。独立した映画として楽しめる作りに放っているが、ストーリーは前作の後日談であるし、前作で主演を務めたジェフ・ブリッジスが、新しい技術の助けも借りながら、年を重ねた現在の姿と若かったかつての姿の両方で登場。様々なレベルで前作と前作を生み出した時代に対する敬意がきちんと払われており、そうした作り手の態度はある種、感動的ですらある。

同時に、この作品には、単なる続編というだけでない違った意味合いを感じさせられる。それは、28年前にやりたくても技術的にできなかったこと、「こうであるべきだったヴィジュアル表現」を、今の技術で実現して見せる映画、としての製作意義である。前作はCGIを全面導入するということで大変な前評判を呼んだけれども、技術や予算の関係上、単なる普通のアニメーションでお茶を濁さざるをえないシーンも多かったと聞く。また、先端的でインパクトがある映像ではあったが、それを生み出す映像技術は、作り手のイマジネーションに追いついていないように感じたりもしていた。

本作は、前作が確立したアイディアを土台に、あの時代に空想された(懐かしい)未来的イメージ、レトロ・フューチャー感を今日的な感覚でまとめあげたデザイン・ワークが大変に素晴らしい。また、ヴィジュアル表現と音響効果・音楽がひとつに融け合って、とても見応えのある映像作品になっている、と思う。本作は音楽担当に売れっ子のダフトパンクが起用され、劇中に顔(?)を出してさえいるのだが、音楽作品として割と独立した存在になるのかと思っていたら、映画が表現する世界の欠くべからざる一部として統合されたものになっているところがいい。これを映画館の暗闇で体験することは、それだけでなかなか満足度が高い。また、本作は3Dのみで公開されたが、そこに対して過度に期待した観客は肩透かしを食らったかもしれない。3Dによる何か革新的に新しい映像表現というより、映像世界への没入感を高める意味合いのほうが強いように感じられる。

前作でも指摘されたことの繰り返しになっているのが皮肉であるが、ヴィジュアル面に比べるとストーリーは必ずしも強くない。また、30年近くのあいだにコンピュータ世界、仮想世界をテーマにしたSFや娯楽作品がたくさん登場したこと、一般的な観客の理解度も大きく変わったことで、どちらかといえばファンタジー寄りな本作の設定を子供騙しだと感じる観客もいるのだろう。しかしそれをとやかくいうのは無粋じゃなかろうか。前作にしたってもともとファンタジー要素の強い作品なのだから、「ウサギの穴に落ちて不思議の国に行きました」と同じタイプの作品だと心を広く持つ方が楽しめるはずである。

ともかく、音響の優れた劇場で体感するのが本作の一番よい楽しみ方なので、迷っているくらいなら劇場へ。前作を知っているのなら迷わずにお勧めしたいんだけどな。

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