12/20/2010

Killers

キス&キル(☆☆★)

えーと、勝手に邦題をつけると『トム・セレックの殺し屋がいっぱい!』という感じの作品である。脇役とはいえ、やっぱり(80年的には)トム・セレックだろ。本作ナンバー#1の大スターは。

ちなみに、原題は味もそっけもなくストレートに "Killers"。中身はヒロインが巻き込まれるタイプの、ロマンティック風味を交えたアクション・コメディである。夫は(元)スパイ。それと知らずに結婚した妻。似たようなアイディアの組み合わせである先行作、『ナイト&デイ』にあやかっての邦題なのか、『キス&キル』。アクションだけじゃなくて、ロマンスが入っているよ、と女性観客向けにアピールしたつもりもあるんだろうね。

まあ、邦題がそんなんだから、見ているこちらもついつい、トム・クルーズ&キャメロン・ディアスW主演のジェームズ・マンゴールド作品と比べてしまうわけだが、ちょっとフェアな比較にならないようには思うのだ。だって、あちらは。観客をどうやって喜ばせたらよいかを心得た熟練のスターたちと、それを活かした映画作りはどうあるべきかを分かっている職人監督が贅沢に金を使って撮った作品だしね。そこは演技者にしろ、作り手にしろ、経験が違う。コメディのさじ加減やリズムも違う。そしてなにより、画面にみなぎるスター・パワーが違う。それに予算だってかなり違う。

南仏のリゾート地でであった男女が恋に落ちて結婚、幸せな家庭生活が始まったかに思えたが、男には元スパイ、腕利きの殺し屋としての過去があった。ある日を境に、何の前触れもなく近所や同僚が男の命を狙って一斉に牙を剥き、全く事情の分からぬ女を巻き込んでサバイバルと真相追求が始まるのだった、という話。映画の舞台は郊外の住宅地で、実態は安上がりな「ご近所アクション・コメディ」なのだが、冒頭に南仏ロケで無理やりゴージャス感を付与しているあたりは安物映画なりの賢い作りといえる。

監督は『キューティ・ブロンド』を成功させたロバート・ルケティックで、前作『男と女の不都合な真実』に続いてキャスリン・ハイグル主演作への登板である。キャスリン・ハイグルは、今回も「そろそろ焦りの出てきた年齢の恋人のいない真面目な女性」を演じているのだが、前作と同じく「捨て身の演技」というのか、悪く言えば下品で痛々しく、ちょっと見ているのが辛くなってくる。脚本・演出もセンスが悪いが、この調子ではいつまでたってもロマンティック・コメディの女王の座は手に入るまい。相手役に選ばれたアシュトン・カッチャーは、キャスリン・ハイグルとは同年代でそれなりの年なのに、かなり若く見える。鍛えられた体は見事だが、ちょっと違和感。あまりに整いすぎた風貌がかえってつまらないし、演技が真面目すぎて映画のトーンを壊している。

そういう主演二人じゃ心許ないということなのか、ヒロインの両親役としてトム・セレックとキャスリン・オハラがキャスティングされていて、ベテランならではのとぼけた演技を見せているのだが、主演の二人とトーンが噛み合っていないのが残念である。過保護で厳格な父親として登場するトム・セレックが、流石にそれだけでは終わらないところ・・・というのか、この役にトム・セレックを引っ張ってきたところは良かったと思う。

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