12/11/2010

Robin Hood (2010)

ロビン・フッド(☆☆☆)

さて。年末年始スコット兄弟祭りの開幕をつげるスコット兄の新作が、本国から半年遅れで登場である。監督とは5本目の作品になるラッセル・クロウ主演で、その題材は誰もが知るシャーウッドの森の義賊、『ロビン・フッド』ときたものだ。

ご存知のとおり、「ロビン・フッド」は実在の人物や出来事がいろいろ重なりあわさって成立した架空のヒーローである。本作はヒーローとしてのロビン・フッドの活躍を描く劇画調の作品ではない。同監督の十字軍映画『キングダム・オブ・ヘブン』の続編とでもいいたくなるような12世紀英国の時代背景を踏まえたゴージャスな史劇といった風情と風格をもった作品に仕立ててきたところが特徴的であり、面白いところだ。獅子心王リチャード1世の十字軍遠征からの帰途から話を語り起こし、十字軍に従事した射手がロビン・フッドとして仲間たちと共に体制に逆らうヒーローになるまでを主筋としながら、ジョン王の課税に対する諸侯の反発、マグナ・カルタ成立にいたる萌芽を背景として描いていく。

ちなみに、近々日本でもTV放送が予定されているリドリー・スコット製作のミニシリーズ『大聖堂』は同じく12世紀だが、『キングダム・オブ・ヘブン』、『ロビン・フッド』に先立つ時代が舞台になっており、あわせて欧州中世史3部作、だな。

仕立てや構えは大仰であるけれども、だからといってとっつきにくい小難しい映画になっているわけではなく、実質的にはシンプルな娯楽活劇としての構造になっている。ただ、娯楽活劇としては、主人公たるロビン・フッドに物語をリードしていく明確な意思や行動規範がなく、周囲の状況に巻き込まれて受身で動いていくところに、ある種の物足りなさを感じないわけではない。本作の意図が「ロビン・フッド」をダシにして英国中世史の一断面を見せるという趣向だと考えると、そうした描き方もさもありなん、と納得がいくのだが。

映像的な見せ場は盛りだくさんだが、ひとつひとつに特筆すべき目新しさは感じられない。そのぶん、表現としてはこなれており、ここぞというところでの見せ方も巧みである。リドリー・スコットという名前にはもっと違うものを期待してしまいがちだが、1937年生まれにして、これだけ体力を要求される大作を次々作っていること自体が驚きというべきだろう。

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