2/13/2011

How Do You Know

幸せの始まりは(☆☆☆)


70歳になる大ベテラン、ジェームズ・L・ブルックス、監督としては2004年の『スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと』 以来となる新作で、得意の大人のロマンティック・コメディ路線。いつものように脚本も兼ねている。最悪だと思えた状況が、何かのきっかけで思いもしない方向に好転することだってあるんだよ("How Do You Know?")、というメッセージも心地よい。

ソフトボールの全米選抜チームで活躍してきたが世代交代を進めるチーム方針でお払い箱とされた女性(リース・ウィザースプーン)が、女遊びの派手な人気のプロ野球選手(オーウェン・ウィルソン)と勢いと成り行きで付き合い始めるがしっくりいかない。そんな折、職務における違法取引の嫌疑で刑務所送りになりそうな上に、恋人とも別れ、父親からのプレッシャーもあって切羽詰っている男(ポール・ラッド)が、知人の紹介でこの女性と食事を共にし、恋に落ちてしまう。

なにか取り立ててすごい作品というわけではないのだが、いつものこの監督の仕事らしく、単純な三角関係コメディのようでいて、複雑な人生と心の機微を流れるような語り口で見せる、過小評価されている佳作。リース・ウィザースプーン好きやオーウェン・ウィルソン好きなら楽しめるだろう。リースが演じる前向きに努力と根性で頑張ってきたのに、人生のターニングポイントでそのすべてを失ってしまった切なさをこの人らしく演じているのと、実にお気楽でいい加減な男のように見えるオーウェン・ウィルソンが、子犬のような目でいいところをさらっていくのが見所である。

オーウェン・ウィルソンや、ジャック・ニコルソン演じるポール・ラッドの父親役などが、基本的に自己中心的な本音を隠さない自由奔放なキャラクターとして描かれているのに対し、映画の中心となるリース・ウィザースプーンやポール・ラッドは、周りの期待に応えなくてはならないというプレッシャーのなかで、本音を押し殺していたり、本音がなんなのか分からなくなっているキャラクターである。不器用といえばそうだし、誠実といえばそうだ。自己主張が強くなければ生き残れない米国では、割を食うタイプの人々だともいえる。本作のポイントはここにあるのだろう。

映画は主役2人のひととなりを描き出すために、中盤、少々まどろっこしい展開になって、映画の流れが停滞するのが欠点だが、ある意味、そこにこの作品の誠意があるようにも思う。こういう2人だからこそ、の名場面もある。

ジャック・ニコルソンは監督と縁が深いのだが、まあ、ラッドにプレッシャーを与える偉大で怪物的な父親という役柄を考えればこれ以上にないキャスティングではあるが、脇役なのに必要以上の存在感で目を引いてしまい、少しバランスが崩れている気もするかな。

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