2/05/2011

Law Abiding Citizen

完全なる報復(☆☆☆)


この映画、宣伝がミスリードしようとするような「社会派の問題作」などでは、決して、ない。そんな風にこの映画を見ると拍子抜けして怒っちゃうんじゃないだろうか。

押入り強盗2人組に妻子を殺された男(ジェラルド・バトラー)は、事件を担当した検事(ジェイミー・フォックス)が事件の主犯との司法取引に応じ、一人を極刑とするものの、証言に応じた主犯者が軽微な罪にしか問われなかったことに衝撃を受ける。10年後、自ら残虐な方法で犯人たちに復讐を遂げた男はあっさりと逮捕されるが、牢獄のなかにいながらにして事件に関与した司法関係者たちの命を脅かしていく。

「捜査段階での不備により決定的な証拠が不採用となってしまった際、犯した罪に見合った裁きを下すことよりも、有罪を勝ち取ることを優先し、証言を得るために行った司法取引の是非」とか、「その結果、重大な犯罪を犯した凶悪な人間が、短期間のうちに罪を許され釈放されてしまう現実の是非」・・・・、などといえば、社会派っぽくなっちゃうのだが、本作においてそれは本題ではなく、奇想ともいえる手口で法のシステムを翻弄する男と、それに対抗する男の、それぞれの正義と信念をかけた闘いを描くためのエクスキューズなのである。

単に善悪の闘いとしても映画は成立するだろうが、悪党を単なる悪党とせず、同情に値すべき動機を与えることで、ピカレスク・ロマンとしての面白さが出ている。そう、これはそういうちょっとした暇つぶしに最適な「面白娯楽映画」である。

ちょっと強引ともいえる設定で、しかしBっぽい面白さを優先させてしまう脚本は、カート・ウィマー。映画好きには「ああ、ガン=カタの、」で通じるだろうか。近作『ソルト』の脚本にも名前がある。監督は、かつて『交渉人』でサミュエル・L・ジャクソンとケヴィン・スペイシーの男の対決を撮ったF・ゲイリー・グレイだ。そんな2人の作る映画のテイストは、だから、社会派の真面目な映画を期待した観客には合わないんじゃないかと思うのである。

中盤でジェラルド・バトラーの「正体」が明らかになったとき、ワクワクしちゃうか、萎えちゃうか。

もちろん、そこで盛り上がるのが、本作の正しい楽しみ方なんだと思っている。見ればわかることだが、そこにある強引さや飛躍こそが、本作のサービス精神であり、そういう作り手の姿勢が「面白娯楽映画」としてのキモなのだ。まあ、正直、そこであんまり盛り上がってしまうと、今度は、この男の本当の手口が明らかになったときにちょっとがっかりするんだけどな。

主演、ジェラルド・バトラーは最近ではロマンティック・コメディなどにも出演が多いが、やはり『300』のイメージは強烈で、タフガイをやると似合う。本作では決して筋肉バカではない、知的なタフネスもイけるところを見せてくれていい感じだ。ダンディで、タフで、知的で、ロマンティックで人間的、ときに馬鹿っぽかったりもする。なんか、そう考えると、この人の個性はどこかジョージ・クルーニーあたりに近いかもね。

0 件のコメント:

コメントを投稿