11/13/1998

I'll be Home for Christmas

サンタに化けたヒッチハイカーは、なぜ家をめざすのか?(☆☆☆)

"I' II be Home for Christmas~♪” ってクリスマス・ソングのスタンダード・ナンバーですな。いろんな人が歌っているので、どこかで聞いたことがあるんじゃないか。個人的にはわりと好きな曲だ。

さて、11月13日公開だから、時期的には感謝祭前、いわゆる「ホリデー・シーズン」映画として、ディズニー・ブランドで配給される家族向けの軽いコメディだが、家族向けと云うよりは、お気楽ティーンズ・コメディといった方が正確かも知れない。

NY出身の主人公は同郷出身の彼女と西海岸で楽しい大学生活を送っている。父親から年代物のポルシェを譲り受ける約束で、クリスマスを家族と過ごすことにするのだが、東に向かってさあ出発というその当日の朝、悪友のいたずらのおかげで砂漠の真中で目を覚ます。サンタクロースの衣装を着せられた主人公が悪戦苦闘している間に、事情を知らない彼女は恋敵の車に同乗して大陸横断の旅に出発してしまった。さあ、どうする?

主演はTV出身のジョナサン・テイラー・トーマス。監督のアルレーン・サンフォードもTV出身で、映画は『ブレディ・バンチ』の続編を手がけていた。そんなわけで、ちょっと小粒でTVっぽい感じは拭えないが、まあまあ、笑って観ていられる作品になっていて、後味も悪くないんだな、これ。

最初のクレジットが可愛らしいサンタ帽子が飛び跳ねるアニメーション。そのホンワカとした雰囲気が嫌いじゃない。主演のジョナサン・テイラー・トーマスは、見た目が若い頃のクリスチャン・スレイターっぽい。一部で人気が沸騰(?)しているようだが、それもまあ、わからんではない。

いかにもアメリカ的な大学の寮生活の描写から始まって、ロード・ムーヴィーに転調する。最後は家族と過ごす伝統的な雪のクリスマス。珍道中あり、恋敵との確執ありで最後はハッピーエンドでしめくくる。全体の構成や配分、テンポは、案外、手馴れたものという感じがする。

エピソードはそれなりに工夫がある。サンタの服で砂漠に置き去りの主人公というヴィジュアル的なミスマッチはやがて、サンタの衣装を着た参加者によるマラソン大会につながって、まあ、単純なアイディアなのだけど思わず顔がほころんでしまうような光景が繰り広げられる。同じルートをたどってNYに向かっている彼女&恋敵とニアミスを繰り返すのだけれど、たまたまパーティ会場の宿り木の下でキスしている2人がTV中継され、それを主人公が見てしまうっていうアイディアもいい。

本当は早く家に戻ってポルシェを手に入れたいくせに、嫉妬心にかられ、彼女の奪還を画策して道草をする主人公。それに象徴されるように、何が一番大切な物か、そういうプライオリティが今ひとつわかっていない主人公の迷走ぶりが、一応、旅を通じてちょっとだけ成長する。

ティーンズ物としては、そこはディズニー映画としての優等生的なところがあって、「ティーンズ」へのアピールが少し足りない商品であるかもしれない。あと、珍道中ジャンルの金字塔といえる『大災難P.T.A.』にはもちろん及ぶものではないだろう。ただ、ドラマとしての筋が一本通っていて爽やか。TVで放送されていたらついつい見ちゃう程度には好感の持てる作品である。

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