11/20/1998

Meet Joe Black

ジョー・ブラックをよろしく(☆★)

死期の近い老富豪のもとに若死にした美青年の体を借りて現れた死神が、そのまま人間の世界を体験するためにうろついているうち、富豪の娘と恋に落ちてしまう。舞台劇を映画化した1934年の『明日なき抱擁』のリメイクだそうだ。

劇場についてからびっくりしたのだが、これ、なんと178分の長尺なんだよね。3時間だよ、3時間。で、ちなみに、この映画の「機内上映版」はここから50分カットされて、監督は「アラン・スミシー」とクレジットされるそうである。正直言って、そっちのヴァージョンを見てみたいもんである。もしかしたら、評価があがるかやもしれぬ。

本当の監督は、マーティン・ブレストだ。かつて、『ビバリーヒルズ・コップ』で当たりを取り、『ミッドナイト・ラン』という佳作をモノにして、軽快な娯楽映画を得意とした人なんだけれども、前作『セント・オブ・ウーマン』はダラダラしてつまらん映画だったな。本作は古くから温めていた企画ということで、なんやらいろんな思い入れがあった結果が、これ、だろう。

この映画の見どころは、「アイドル俳優」としてのブラッド・ピットの美しさを大スクリーンでタップリと堪能できるところだ。コーヒーショップで登場するシーンの素の魅力、キスからセックスまでなんでも初体験で戸惑いと喜びを演じる演技で見せる彼の表情、ピーナツ・バターをなめる間抜けなシーン、まるで子犬のようにアンソニー・ホプキンスについて回るところまで、もう、ブラッド・ピット好きの女性ファンなんかだったら堪らない趣向だろうと思う。

なにせ、自分の美しさに自覚的であり、それゆえに変な映画ばかり選んで出演しているブラッド・ピットの、こういう部分を堪能できる映画ってのは、実は本当に久しぶりのことだからね。

ヒロインはクレア・フォラーニである。 『ポリス・アカデミー7』や『ザ・ロック』の小さな役でキャリアを積んできたみたいだが、この人には自然体で飾らない雰囲気があって、ちょっといい感じだ。ただ、ロマンティックな映画の、まごうことのないヒロインであるはずなのに、なんだか添え物のような扱いになっているのが可哀想ではある。

なぜといえば、この映画の真の主役はアンソニー・ホプキンスであるからだ。死に直面した富豪と、生を体験する死神を通じて、人生とは何か、というテーマを扱っているのがこの作品なのである。そういう重いテーマを預かる重要人物に、そこに存在するだけで画面に映らない人間の深みを付加してしまうのが名優たるホプキンスのすごいところだろう。

同じ脚本でも2時間にまとまりそうに思えるのだが、どのシーンにもタップリと時間を使い、ある意味でいえば優雅に、落ち着いた風格のある演出が施されている。狙いはわからないでもないが、プラピの美貌にさして興味のない当方としては、これはもはや、苦痛の部類。作品のテーマもぼやけ、かえって散漫になっているように思う。

マーティン・ブレストは前作をターニング・ポイントに、演出のスタイルが随分変わってきたように見受けられる。ちょっと感心しない方向性だなぁ。

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