9/28/2008

Iron Man

アイアンマン(☆☆☆★)

ああ、ロバート・ダウニーJr。クスリ絡みで一線を干された彼が、TV『Ally McBeal』の第4シーズンで復活し、大人の演技で最高のキャラクターを作り出してくれたとき、あまつさえ、歌声まで披露してくれたとき、どれだけ嬉しかったことだろうか。そして、毎週、TVでその演技を見るのがどれだけ楽しかったことか。そして、再びクスリによって番組降板を余儀なくされたとき、どれだけ寂しかったことか。彼のいなくなった件の番組は、翌シーズンからあらぬ方向に向かい、視聴率低迷で打ち切られた。(まあ、第5シーズンはジェームズ・マーズデンが陽の目を浴びるきっかけにはなったけどね。)

もちろん、近年ではデイヴィッド・フィンチャーの『ゾディアック』なんかに脇で出ていい演技をみせてくれていたので、「復活」といういいかたはちょっと失礼だと思う。もともとがコメディアンゆえに『トロピック・サンダー』みたいなので気を吐くというのもわかる。しかし、まさか、マーベル映画でアメコミヒーローを演じるとは、演じさせてもらえるとは、思いもよらなかった。この映画の魅力の1つは、間違いなく、意表をついたキャスティングでこの主役、「戦う社長」を演じる彼、である。

そして、この映画のもうひとつの魅力は、スーツを開発する過程をきっちり見せるところ。do it yourself 感覚というか、なんというか、自宅ガレージにてプロトタイプをつくり、実験し、改良しといった、一見して地味なプロセスを順を追ってみせた、これが、この映画のオリジナリティだろう。もちろん、『スパイダーマン』でも地味にスパイダースーツを作成していたし、『バットマン・ビギンズ』では耳のパーツを中国の工場に大きなロットで発注して云々、というしみったれた会話で笑わせてもらったが、それらとは明らかに違う、「男の子」心をくすぐり、なんだか無意味に興奮させられる描写がここにある。

で、改造したりパワーアップしたり、新スーツを開発したりするんでしょ?いやぁ、わくわくするなぁ。(呆)

もちろん、アクション映画としても、ラストの対決に『ロボコップ2』の延々と続くロボ対決を想起させられる見せ場を用意しており、ちゃんとポイントは押さえた作りになっていて、いわゆる popcorm movie というか、お気楽に楽しむには最高の作品である。

が、別に複雑な話でもなんでもなく単純明快で分かりやすいこんな映画が「3億ドル(US)」の大ヒットとなると、作った側もさぞびっくりしただろう。もちろん、ポスト・911、ポスト・イラク戦争の娯楽映画であるからして、単純に中東の悪者テロリストをやっつけろ、というほど単細胞ではない。悪を撲滅するためにばらまいた兵器がテロリストに回り、自らの身に火の粉が降りかかってくるという背景設定は、どこか、『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』で描かれたムジャヒャディン転じてアルカイダな構図を思い起こさせ、皮肉でもある。そこに、世界に兵器をばらまいていた死の商人が改新して世直しをするという前向きでポジティブなメッセージがはまり、ダウニーJrの「改心と復活」が二重写しになった。そんなコンテクスト抜きに、これほどの特大ヒットは説明もつかない。

映画は、シールズの長官を名乗る謎の眼帯ハゲ、「ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)」が登場しておしまい。日本では公開の順番が逆になったが、『インクレディブル・ハルク』では、ダウニーJr 演じる「社長」が同様の出演を果たしており、うわさされるマーベル・ヒーロー大集合映画『Avengers』の前フリとなっている。もちろん、これから映画化されるはずの「ソー」だの、「キャプテン・アメリカ」だのがコケたら、どうなることか知らんけど。

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