5/03/2009

Red Cliff Part II

レッド・クリフ Part II 未来への最終決戦 赤壁 決戦天下(☆☆☆)


あいかわらず前説に煩いテロップてんこ盛りの「ゆとり仕様」も癇に障る。異例ながら公開にあわせたPart-I のTV放送時に、予告を通り越して不必要なまでにPart-II 本編内容を垂れ流したのも興を削がれた。それになにより「未来への最終決戦」などという語呂の悪いサブタイトルもセンスが悪い。(原題につけられた「決戦天下」のほうがよほど雰囲気が出ているのにね。。。)しかし、そうでもしなければ投資が回収できないというなら少しくらい我慢してやろう。

さて、現場を想像しただけで逃げ出したくなる5時間大作を真ん中でぶった切った後半部分がようやく公開になったわけである。ようやく、といっても、前半部分の公開から5ヶ月の超特急だ。まあ、シリーズものとはわけが違い、もともと1本の映画を分けているのだから、このくらいのインターバルでも正直いえば長く感じるものだ。Part-I のヒットがよい方向で影響を与えたに違いないが、前作の余韻覚めやらぬうちの公開は英断だし、感謝したいと思う。実際のところ、part-I もそうなのだが、part-II 単独で、1本の映画として捉えるのは意味がない。前半(つまり前作)部分で終わっているキャラクターの紹介と念入りな伏線張りの成果が、いよいよ大きく物語が動き出す後半(本作)のほうになって活きてくる展開である。キャラクターたちはそれぞれの見せ場や活躍のしどころを与えられ、5時間の作品としてのドラマの流れとうねりがクライマックスに向かって集約されていく。

Part-II を見終えて思うことは、このくらいの規模の作品になると、作品としての完成度を云々いう以前に、作品として完成させることができたこと、そのこと自体に価値があるのではないかということだ。

大作『ウィンド・トーカーズ』の興行的失敗をきっかけにハリウッドにおけるトップ・ディレクターとしての座を失ったジョン・ウーが、アジアに帰って製作を開始した念願の企画。途中、キャスティング上のトラブルなどで幾度も危機に見舞われながらも完遂された超弩級のプロジェクト。最新のVFX技術を導入しているとはいっても、気が遠くなるほど多くの人馬が投入され、実物大の巨大セットが組まれ、国境を越えて人気スターを結集し、監督の独自解釈を交えて展開される物語は、映画館の大スクリーン映えするスケールと迫力満点のフィルムとして結実している。演出は幾分大味だが、「義を重んずる登場人物たち」、「男の友情」、「鳩」をはじめとして監督の刻印はいたるところに押されていて、火薬の発明以前でも大爆発はあるし、二丁拳銃ならぬ二刀流のスローモーション大暴れもあれば、刀によるメキシカン・スタンドオフだってある。アクション・シーンの見栄えに関しては勘所に狂いはなく、ジョン・ウー好きとしても一大イベントという位置づけで楽しむことができる。ついでに三国志好きの観客にとってもそれぞれの楽しみどころがあり、ジョン・ウーの独自解釈と作劇を許容しているようだ。

もちろん、ジョン・ウーがかつて撮った大傑作たちに感じられた才気や輝きを、それを見たときの衝撃と感動はここにないし、大規模なアクション史劇の歴史においてことさら傑出した作品だとも思わない。ただ、見たいものは見せてもらったし、満腹感を覚えて劇場を後にした。企画を耳にしたとき、プロジェクトとして瓦解し、大失敗作に終わる可能性を危惧していただけに、ほっとしたというのが正直な気持ちである。

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