5/31/2009

Seventeen Again

セブンティーン・アゲイン(☆☆☆)


ディズニーの『ハイスクール・ミュージカル』シリーズで人気が沸騰したザック・エフロン主演のコメディである。家庭生活にも仕事にも行き詰ったマシュー・ペリー演ずる男が、心はそのままに若いころの姿(ザック・エフロン)に変身してしまい、友人の協力を得ながら人生の選択をやり直そうとハイスクールに通うのである。よく似たパターンの作品は繰り返し作られている、と感じるだろう。が、この作品、どこか変なのである。面白がってみていたのだが、どこかすっきりしないのだ。何故なのか?

人生をやり直せるとばかりに学校に行けば、関係が疎遠になっていた娘や息子と机を並べ、悪い男と付き合う娘に「父親」としてハラハラし、イジメの対象になる冴えない息子が「父親」として心配になる。自分の息子と友人づきあいをするうち、離婚を切り出された妻に近づくことになり、関係を修復したいという思いが強まっていく。これはハイスクール・コメディではないし、青春コメディでもない。中年親父の奮闘コメディなのである。これをあくまでザック・エフロン主演で押し切るところがこの企画のミソなのだが、しかし、一方では誰をターゲットにした企画なんだかよくわからない作品だということもできるだろう。だって、ザック・エフロンを見るために集まった若い観客に、「いや、実は中年親父も辛いんだよ」という言い訳を見せてどうするのか。

例えば、ある種の類似性を感じさせる企画として、母親と娘の体が入れ替わるという設定で、時のアイドルであったリンジー・ローハンを主演させたヒット作『フォーチュン・クッキー(Freaky Friday)』という映画があった。アイドルを起用した作品という意味でも、見た目と中身の年齢ギャップで笑いを取るパターンも似ているといえる。しかし、この作品では親世代と子供世代の相互理解がテーマに置かれていて、もちろん子供世代に親の苦労を垣間見せるという教育価値もあるのだが、一方で子供が親に自分の立場を分かってもらうという部分が、すなわち、メインとなる若い観客層の心情に訴えかけるようにできているわけである。そういう意味で、商品としては正しく顧客の求めるものに応えているといえるだろう。しかし、翻って本作はどうか。主人公が娘や息子の切実な悩みと向き合うことで、一見、「相互理解」というテーマに触れてはいるように見えるのだが、それはあくまで主人公が「父親としての責任」や「家族への愛情」に目覚めるという扱いであって、人生に迷った中年男が自らを再発見する物語としての基本線を外れるものではない。これをザック目当ての女の子たちに見せるというのだから、やはり、それはヘンだというのである。

話の内容とターゲット観客層とのあいだの齟齬をさておくとすれば、1本の作品としてはチャーミングで楽しい出来栄えである。ザック・エフロンを見せる映画だという本作最大の訴求ポイントだけはさすがに外すことなく、いろいろな見せ場が用意されているのはいうまでもない。主人公の友人であるヲタクな独身男の奇妙な生活を笑いの種にしているが、ディテイルも楽しいし、キャラクターに対する愛情のある描き方になっていて不快さはない。クライマックスにむけた話の運びもよく考えられていて、ほろりとさせるものもある。ただ、話が話ゆえに、ハイスクール・ライフをきちんと描けていないところは物足りないところだろう。そこに主眼がないのは分かるのだが、登場する高校生たちは、「息子・娘」と「それ以外」という区別されておらず、個性も人間性もあったものではない。そこをもう少し丁寧に描いていれば、中高生向きのエンターテインメントとしての違和感は相当部分解消され得たのではないかと思う。

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