9/29/2009

Crank : High Voltage

アドレナリン:ハイ・ボルテージ(☆☆)


結果としてということだとは思うのだが、90年代を沸かせたアクションスターたちがどんどん失速し、ビデオ・ストレートなゴミ映画でお茶を濁ようになったなか、00年代を代表するB級アクション映画の顔といえば、ジェイソン・ステイサム、なのである。今年はつい先日公開された『トランスポーター』シリーズ最新作とあわせてときならぬステイサム祭り状態だ。あちらではアウトローながらスタイリッシュなヒーローを演じ、こちらではその悪人顔を活かした過激な殺し屋を演じてみせている。まあ、どんなに演技をしてみせたって、ジェイソン・ステイサムはジェイソン・ステイサムにしか見えないあたりも「アクションスター」らしくて素敵だ。

さて、本作は『アドレナリン』こと「CRANK」の続編。前作では妙な薬を打たれたせいでアドレナリンの分泌を一定レベル以上に保たないと死んでしまうというバカ設定でテンション高く押し切ったわけだが、今度は移植用に心臓を盗まれた上、代替の人工心臓が止まらぬように充電し続けなければ死んでしまうという、前作を軽く凌駕する無茶な設定である。そんなわけで、今回は「アドレナリン」とは関係ないストーリーだが、邦題は便宜上「アドレナリン」だ。まあ、テンションが高く、観客のアドレナリン分泌を促す映画、ということで、そんなに違和感もないか。人工心臓を止めないために車のバッテリーや高圧電流で充電をしようとする、絶対にまねしたくない数々のシーンにおけるビジュアル的インパクトは凄い。ステイサムの狂気を漂わせた悪ノリ演技も最高である。

前作に引き続き、マーク・ネヴェルダイン&ブライアン・テイラーの共同監督である。エッジが立っているというよりは洗練されておらず荒削り、どこかからの臆面もないイタダキのパッチワークで成立している映像スタイルがB級らしさを際立たせている。正直なところ、アイディアそのものが面白いのであるから、ここまでチャカチャカ落ち着きのない映像にしなくてもよいと思うのだが、当世、これくらいやらないと刺激が足りないとでも思っているのであろう。

また、エロ・グロ・ナンセンスというのか、下品というのか、このシリーズの売り物は、MPAAのレイティングなぞどこ吹く風とばかりに過激な描写にリミットを設けない姿勢、不良性感度の高さである。主人公を初めとして主要な登場人物はみんな何がしかの悪党であるから、周囲の人々を巻き添えにしようが何をしようがお構いなしで、簡単に人が死ぬし、残虐な描写も多い。こういうのを不謹慎だと思ったり、眉をひそめる向きにはとてもじゃないがお勧めできない作品である。ことに今回は、どこかで完全にリミッターを振り切ってしまったような描写が延々と続くので、メインストリームの観客に向けたエンターテインメントとしてはいささかバランスが悪いといえるだろう。前作にも増してキワモノ感が漂う仕上がりであるといっておく。

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