9/11/2009

X-Men Origins: Wolverline

X-Men Zero ウルヴァリン(☆☆★)


ヒーロー・チームの活躍を描く『X-Men』 劇場版シリーズ3部作からのスピンオフ第1弾。映画版で中心的なキャラクターとして描かれた人気者、「ウルヴァリン」を主役に、過去に遡ってキャラクターの生い立ちを語るものである。で、原題には "Origins"、おそらく、Origins シリーズとして、他のキャラクターたちの1本立ち企画も進めていることであろう。

新展開を成功させるべく、監督には『ツォツィ』のギャビン・フッド、脚本には『25時』や『君のためなら千回でも』のデイヴィッド・ベニオフを迎えるという、かなり野心的といえる布陣には驚かされた。このメンバーであれば『X-Men』シリーズ屈指の人気者が背負った運命をドラマティックに語ることができると踏んだのだろう。皿の上には魅力的なドラマの材料がふんだんにのっている。強力な治癒能力により不死に近い体を持つ男。同様の運命を持った兄との確執。恋人との束の間の休息と、彼女の死。軍の人体実験と、アダマンチウム合金の骨格の謎。主演で、今回はプロデューサーも兼務する売れっ子ヒュー・ジャックマンは益々格好良くなってきたし、その兄にキャストされ、ヒュー・ジャックマンと因縁の対決を繰り広げることになるリーヴ・シュレイバーもいい役者だ。

しかし、邦題にくっついた「Zero」が端的に示すように、本作はいわゆる「エピソード1」ものの一種である。「エピソード1」ものの火付け役でもあったあの『スター・ウォーズ』の新三部作がそうであったように、既存作品で描かれたできごととの整合性を図る必要性からくる窮屈さであったり、先の出来事がわかっているが故のドラマ作りの難しさであったりという困難を抱えているのがこの手の作品の共通したところで、本作も例外ではない。悪の黒幕、ストライカーを殺すわけにはいかないし、主人公は記憶を、そしてすべてを失わなければならない。もちろん、さまざまなバージョンのコミックで語られたさまざまなバージョンのエピソードの最大公約数的なところとの整合性も気にした結果だろう、予定調和のエンディングに向かい、勿体付けとご都合主義、それにあまりに陳腐なエピソードが羅列されていく。そこにはなんら新鮮な驚きはない。

まあ、それが苦痛にならないのは、107分という、2時間をきった(当世では短めの)上映時間のおかげだろうか。人気シリーズの新作で金のかかった大作だからと気張るのではなく、どうあがいてみても軽い気晴らしの娯楽映画でしかないという事実を作り手が忘れていなかった、ということだろうか。むしろ、監督・脚本の人選からすれば、それは意外なことのように思われる。

黒幕ストライカーが主人公の次に作り出した怪物、「ウェポンXI」ことウェイド・ウィルソン(=デッドプール)は、映画シリーズとしては本作が初登場。せめてこやつくらいは完膚なきまでに叩きのめしてくれるのかと思えば、ありがちな「続編がありますよ」エンドがくっつくことで復活が予告される始末。なんでも、このキャラクターを使ったスピンオフの計画があるらしい。

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