10/10/2010

Knight and Day

ナイト&デイ(☆☆☆★)

男女、(多少は旬を過ぎたかもしれないが)誰にも真似のできないオーラを放つスーパー・スタア・カップルが共演する楽しいロマンティック・アクション・コメディ。

しかも、ジャンルを問わず佳作を撮り続ける職人、ジェームズ・マンゴールド監督が、ハリウッドお得意の「巻き込まれサスペンス」、「スクリューボール・コメディ」、「スパイ・アクション」の3つのジャンルを掛け合せてみせる。尺は1時間50分。伏線をきっちり回収し、少し心温まる気持ちのいい幕切れ。これ、文句なしの「お気楽ポップコーン・ムーヴィー」の快作、だろ?

思うにトム・クルーズ、案外、こういう映画をやってきていない。彼のフィルモグラフィには、俳優としての演技やプロデューサーとしての嗅覚を評価して欲しい映画、はたまた、映画ファンとしての自己満足といった映画は多いのだが、純粋に「スターであることに自覚的に応えてみせるだけの映画」という意味では、『カクテル』くらいしか思いつかない。

しかも、今回は、自分の胡散臭いイメージそのものをパロディにしてみせる余裕まで見せてくれる。そう、『ミッション・インポッシブル』のようにスーパー・スパイが活躍する映画、ではなく、事件に巻き込まれたキャメロン・ディアス側の視点で、正体のわからぬ胡散臭い男に振り回される話になっているのが技ありだと思うのである。

しかし、『バニラ・スカイ』であれだけ散々な扱いを受けていながら、脚本を読んでトム・クルーズに声をかけたというキャメロン・ディアスもよく分かっている。なにより、演技者としても「キャアキャア騒ぐ頭からっぽのめんどくさいけど可愛いブロンド女」を嬉々として演じてみせ、40も近いのに堂々と赤ビキニを着てみせるあたり、あのゴールディ・ホーンの絶頂期に並び称されるべき愛すべきコメディエンヌぶりではあるまいか。(ゴールディ・ホーンは50になってもパンチラやってたけどな。)トム・クルーズとの息もあっていて、掛け合いの間が抜群。

脇役にも『ダウト』でメリル・ストリープ相手に一歩も引かなかったヴィオラ・デイヴィスを起用したり、胡散臭い裏切り者といえばこの人、ピーター・サースガードを起用し手抜かりはない。

気になることがあるとすれば、明るく楽しい映画に似合わず「悪人」とはいいきれない人がたくさん死ぬことか。武器商人配下は構わないのだが、単に職務に忠実なだけのFBI職員たちはいい迷惑である。「悪の組織」を相手に戦うときには「敵」という記号として了解できるのだが、今回のようなケースでは少し気になるものだ。

とはいえ、ロマンティックな光景を楽しめる世界各地の特徴的な場所をロケしてまわり、段取りがめんどうなところは薬で眠って(眠らせて)すっ飛ばし、楽しい見せ場だけをテンポよくつなぐ手際のいい構成。主演の二人がかなりの割合のスタントをこなしているようにも見え、作り手のサービス満点ぶりが心地良い。ちょっと、古きよきハリウッド映画の現代版といった風情で

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