10/31/2010

Going the Distance

遠距離恋愛 彼女の決断(☆☆☆)


振られて気落ちしていた彼と、NYでインターン中だった彼女がバーで出会って意気投合するが、彼女は夏が終わればサンフランシスコに戻って学期を終えなければならない。それを承知で始まった関係だったが、互いに去りがたく、遠距離恋愛として続けることを選択する。大陸の東と西、時差もあれば、ハイシーズンの航空機代が2000ドルを越えることもある。離れている寂しさや、不安を与えるような周囲の助言に負けず、誠実に関係を続けようとする二人だったが、NYで職を得ようと努力しても報われない彼女に、地元の新聞社からのオファーが出たことで決断を迫られる。

ロマンティック・コメディ。えーと、コメディの方が少し強め。台詞でもシーンでも下ネタ系が多いから注意が必要だが、明るく笑えるレベルの節度は保っている。とはいえ、子供に見せるもんでもないので、国内でもR-15指定になっているのだね。

ところで、本作主演のドリュー・バリモアとジャスティン・ロングといえば、ここ数年、くっついたり離れたりとお騒がせなカップルとして有名だ。まあ、実のカップルがスクリーン上でカップルを演じると悲惨な結果になることが多いのは知ってのとおりだが、本作はどうか。この二人、もちろんその熱々ぶりで勝手にやってろ、と思う観客もいるのだろうが、素直に見ると、スクリーン上で格好いいところばかり見せようとするのではなく、情けなかったり下品だったりするところも素顔や本音に近いところも、普段着な感じをあっけらかんと晒すあたりが悪くない、と思うのである。そして、やっぱり、スクリーン越しに見ても本当に2人の相性がいいことがよく分かる。まあ、最近(また)破綻したらしいけどさ。恋人同士でもあり、仲の良い友人同士でもあるような、いい空気がそこにある。

この映画は、二人が以前に共演した『そんな彼なら捨てちゃえば』とは違って、ドリューのプロダクション(Flower Films)のものではないが、映画の内容や作品のテイスト、演じるキャラクターに至るまで、いかにもドリュー・バリモア(そして、ジャスティン・ロング)の映画だという先入観を裏切らない。実に「らしい」仕上がりである。だから、この2人が、この2人が出ていた作品が好きなら、まずまず楽しめるはずだ。

例えば、コメディ部分の微妙に下品なテイストも、それを嫌がらずに演じてみせるドリューの個性の反映であるし、過去のコメディ作品で彼女が体当たりで見せた下品ネタを思い出すことだろう。やたら映画ネタが多く、そのうちいくつかは80年代ネタであるのもドリューの趣味が強く反映されているように見える。(80年代映画ネタでは爆笑必至のシーンがある!)またキャラクターの設定でも、過去の回り道の結果年齢がちょっと高いヒロイン、というところに、回り道をいっぱいしてきたドリューの人生が重なって見える。2人の職業属性にしても、新聞記者を目指すドリューって、以前にも高校に潜入するライターってやってたし、CMで"Mac君"をやっていたジャスティン・ロングにはやはりお堅い職業ではなく、レコード会社勤務が似合う。ジャスティン・ロングの微妙に行けていない感じや誠実さは、『そんな彼なら捨てちゃえば』や『スペル』でも同じイメージで描かれていた路線だし、ユーモアのセンスは御存知の通りだ。

ことほど左様に、観客の映画的記憶と主演2人の個性をうまく利用した仕上がりで、楽しい時間を過ごせる佳作だと思う。惜しむらくは、こうした作品が全国ロードショーではなく非常に限られた劇場でしか公開されない日本国内のマーケット状況である。昔は地方だと2本立て興業が主流で、1本では勝負できないこういう小さい作品でも、何かのついでに「出会う」ことが可能だったし、それが結果的に映画ファンの裾野を、見られる映画のジャンルの幅を広げていた面もあったように思う。結局、こういう作品はレンタルやCATVのマーケットにしか活路がない時代なのかと思うと、ちょっと寂しい。

ああ、そうそう、「おせっかいなヒロインの姉」という定番ポジションで、クリスティーナ・アップルゲイツが好演。このひとがこういう役をやるようになったか。一昔前ならキューザック姉の独壇場だったんだが。

0 件のコメント:

コメントを投稿