10/10/2010

Legend of the Guardians: The Owls of Ga'Hoole

ガフールの伝説(☆☆☆)

なんだか国内興業では盛大なコケ方をしているようだが、古くからの『スター・ウォーズ』ファンには本作が劇場から駆逐される前に鑑賞することをオススメする。せっかくだから3Dで。

舞台は(おそらく)フクロウたちが文明を築いている世界。種族によらず役割を果たし共存する立憲王政的な共和国と、特定種族の純血性を土台に他の種族の隷属を求める悪の帝国が歴史的な戦いを繰り広げ、悪は滅び去ったはず、だった。・・・が、悪の皇帝(?)は生き延び、帝国は密かに版図を拡大しつつあった。しかも、いつの日かやってくる決戦の日に備え、フクロウ一族に対して圧倒的なパワーを発揮する未知の秘密兵器の完成を急いでいた。そんななか、英雄たちの伝説を聞かされてのどかに育った主人公とその兄は、飛行訓練も満足に終わらぬうちに帝国に拐われ、こともあろうか兄のほうは帝国軍の兵士として見出され、順応させられていく。悪の要塞を抜けだした主人公は、伝説の勇者たちが住むというガフールの地を目指して旅立つのだった。

そんでさ、目の前にいた老人が伝説の勇者だったりさ。頭で考えずに砂嚢で感じろ、とかなんとか教えを受けちゃったりさ。炎燃えさかる中でのダークサイドに落ちた身内との決闘があったりさ。罠にかかって全軍一網打尽の危機に主人公が秘密兵器の中枢をシャットダウンしてさあ反転攻勢だ、とかさ。ここ一番のところでフォースを使え、じゃなくて砂嚢を使え!とかさ。ひとまず悪の親玉を倒して共和国の王と后の前で表彰されるとかさ。悪の残党は捲土重来を期して撤退とかさ。

もう、すっげーSW濃度が高いんだからっ!燃えろといわれなくても燃えますって。

そんな話を、CGIアニメーションとはいえ、『ドーン・オブ・ザ・デッド』、『300』、『ウォッチメン』で名を上げたザック・スナイダーが監督しているんだよ?

まあ、騙されたと思って観てほしい。SW好きなら存外に楽しめることを保証するからさ。

それはともかく。

原作である『ガフールの勇者たち』シリーズは、フクロウの生態を伝えるノンフィクションにするつもりでリサーチしてたのが、ファンタジー仕立ての児童文学に転化したものだという。本作にも、擬人化しながらも過度なキャラクター化を避けたフクロウたちのデザインや、排泄物としてのペレット、食事としての(おいしい)芋虫などの表現が残っていて、比較的に実写寄りのキャラクター・デザインになっているはそんな背景もあってのことだろう。

その結果、この絵柄、子供向けにはリアルで怖い、気持ち悪いと思われるのだろうが、これが意外なことに、ヒロインや妹は「萌え」可愛いく描かれているし、悪いやつは悪く、格好いいやつは格好良く、味のあるやつは味のあるキャラクターになっている。このあたりのバランスはうまい。同じスタジオが手がけた『ハッピー・フィート』と同じ感覚だ。

残念ながら吹替版が市場を席巻しており、当方もオリジナル音声を聞いていないのだが、実力者が脇を固めた吹替版の出来栄えは悪いものではない。映像におけるキャラクターの描き分けを補強するものになってから見分けがつかなくなるなどの懸念もない。だいたい、主人公の兄の声に、浪川大輔(新3部作・クローンウォーズのアナキン・スカイウォーカーの声)というキャスティングが洒落ているじゃないか。

原作シリーズの前半4分の1くらいをダイジェストしながら再構成しており、駆け足しでドラマが薄くなっているような印象は否めない。が、とにかくビジュアル面は見ごたえがある。モフモフしたフクロウの毛並みも気持ち良さそうだし、空を飛び、鉄の仮面や爪を身にまとったフクロウたちが壮絶な空中戦を繰り広げる様も3D映像で迫力たっぷりである。そしてザック・シュナイダーが得意とする『300』スタイルの可変スピードと回り込むカメラでアクションを見せる演出も案外3D表現との相性が良い。このスタイル、もう食傷気味だ、などとは馬鹿にはしていられないかもしれない。また、3Dの奥行き感を活かした集団戦の演出には新規性も感じられる。

作品全体としての完成度は並の範疇を出ないところもあるので、内容的に「取り急ぎSW好きにお勧め」とした。が、この秋、見る価値のある3D映画は3Dカメラで撮ったことを売りにする『バイオハザード』ではなく、こちらだと断言したい。もひとつ言えば、CGI全盛の今日、「CGIによる実写志向のアニメーション」と、「CGIを多用するVFX映画やパフォーマンス・キャプチャー作品」などの垣根は完全に崩壊したことが、人材面での越境というかたちで表出した作品群の、そのなかでもかなり要諦となる1本として、アニメーションながらザックス・スナイダーの手癖が満載の本作は必見。ていうか、とにかく見ろ。劇場で。3Dで。打ち切り前に。急げ急げ!

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