6/17/2011

Red Riding Hood

赤ずきん(☆☆☆)


おとぎ話の原点に戻って、残酷さや恐怖を強調した大人向けの寓話に仕立て直した「赤ずきん」・・・というわけではない。

中世のヨーロッパを舞台に、「トワイライト」あたりの観客層をターゲットにした「人狼ものファンタジー・スリラー」をやろうという企画である。監督は『トワイライト』1作目のキャサリン・ハードウィック、幼なじみからも、親の決めた許嫁からも、人狼からも言い寄られちゃって、もう、私どうしたらいいの?というヒロインにアマンダ・セイフライド。

かつて人狼に襲われた記憶の残る集落。人狼が人を襲わないよう、定期的に生贄を供えるなどして「共存」してきたのだが、ある満月の晩に主人公の姉が人狼の犠牲となる。血気盛んな一部の村人に先導されて山の奥深くに分入り、犠牲者が出たものの大きな狼を仕留めることに成功した村人たちは歓喜に湧くが、人狼ハンターとして名を馳せる祭司は、人狼は村人の中にいると警告を発する。

この映画で面白いのは、人狼に恐れおののく村に、自らの妻まで人狼として惨殺したという触れ込みで名をはせる「人狼ハンター」の聖職者が招かれてからの展開である。

普通なら、人狼ハンターは頼もしい味方として大活躍となるところ、そのやり口がだんだん陰湿な「魔女狩り」めいてくる。ヒーローとして登場したと思われたこの男が、人狼以上の悪者の様相を呈してくるあたりがとても面白い。罪もない村人に嫌疑をかけ、拷問し、換金し、命を奪う横暴な宗教的権力。これを演じているのが、おなじみゲイリー・オールドマンだ。まあ、この顔を見たら悪人と思え、と条件付けられているせいもあるが、だんだん「このくそったれな司祭をぶち殺せ、やっつけちまえ!」と人狼さんを応援したくなってくる。人狼の襲撃シーンは、思いもよらず盛り上がりを見せることになる。

ストーリーは、人狼の正体は誰なのか、というミステリーを縦糸にして進んでいく。しかし、それほど凝ったトリックや、驚きの結末があるというわけでもない。人狼による犠牲者が一体誰なのかに着目していれば、少し勘の良い観客なら答えが分かってしまうんじゃないだろうか。一生懸命ミスリードしようとするので、その逆を張っていくだけでもいいかもしれない。いずれにせよ、そういうミステリーとしては、そんなに期待しないほうが楽しめるんじゃないか。

厳密に時代考証のされた風格あるコスチューム・プレイというのではなく、あくまで、最近のNHK大河ドラマのような雰囲気だけの「なんちゃって時代劇」である。ティーンの女性客目当てだから、そんなにグロもない。大人の真剣な鑑賞に耐えるものではないが、なんだかんだいってグデグデのロマンスが主筋の『トワイライト』よりは面白く見られる作品で、ちょっとした暇つぶしには悪くない。

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