6/11/2011

X-MEN: First Class

X-MEN ファースト・ジェネレーション(☆☆☆★)

1960年代初頭。冷戦下で緊張にある東西両陣営を手玉に取って自らの野望を実現させんとする大悪党に立ち向かう、CIA配下の特殊能力をもったスーパー・エージェントたち・・・という物語の枠組みにあわせて、おおらかなスパイ・アクション映画、というか、そのものズバリ、「ショーン・コネリー主演時代の007」な雰囲気を隠し味にして新鮮味を出してくるあたりがなかなか巧者な『X-MEN』フランチャイズ、作りにつくって、これが第5作目。クールなエンドクレジットにシビれる。

映画はキャスト一新の"プリクエル"であるから、「リブート」という紹介のされ方をすることがあるけれど、たとえば、『バットマン』がクリストファー・ノーランで仕切りなおしたのとは、『スター・トレック』がJJ・エイブラムズ再創造されたのとは、かなり位置づけが違う。過去の作品での描写とは小さな矛盾点が散見されるとはいえ、これまでと世界観を一新しての「仕切りなおし」ではなく、これまでの作品群の延長線上で作られた1作である。(もちろん、若い役者に交代させてフランチャイズの延命をはかるという目論見は同じなんだけどね。)

最初に作られたトリロジーに先立つ時代、後に意見を違え対立することになるミュータントの2大リーダーはいかにして出会い、友情を育み、そして道を違えることとなったのか。X-MENの世界における基本的な約束や価値観、対立構造の成立を、キャラクターの来歴にさかのぼって描きつつ、「キューバ危機」をネタにして映画版X-MENユニバースにおける現代史を語るという趣向である。そのドラマ、アクション、キャラクターの能力を活かしたチーム戦、シリーズの大ネタ・小ネタや楽屋落ちまで、その全てが(よもや想像もしなかったレベルで満載された)シリーズ最高の完成度、満足度である。マニアックに走り過ぎない正攻法の娯楽活劇を、絶妙のバランスで完成させた『キック・アス』のマシュー・ボーン監督は、やはり只者ではないようだ。このまま3部作でも何でも続きを見たいものだ。

キャスティングがいい。もちろん、X-MENの看板があるから許されることとはいえ、一般的な知名度の高さやスターバリューにこだわらず、実力のある役者を揃えたところが成功の一因だろう。特に、作品の2枚看板である「プロフェッサーX」ことチャールズ・エグゼビアに扮したジェームズ・マカボイと「マグニートー」ことエリックを演じたミヒャエル・ファスベンダー(一応ドイツ人だしな)は、れぞれのキャラクターのその後(老後?)を演じたパトリック・スチュワートとイアン・マッケランを「予感」させる説得力ある演技を見せてくれて、見れば納得のはまり具合だ悪役のケヴィン・ベーコンとか、オリバー・プラット、マイケル・アイアンサイドなどのベテラン、ジェニファー・ローレンスやニコラス・ホルトら新進の若手のアンサンブルを組んだこだわりの感じられるキャスティングに、作り手の本気を感じさせられる。

本当の60年代、というのではなく、「フィクションのなかの60年代」を意識したに違いないレトロなデザイン・ワークも目に楽しい。そのなかにあって、コミック調のユニフォームやヘルメットなど、普通に考えたら実写版映画には安っぽくなってしまいそぐわないと思えるようなデザインが絶妙なバランスで共存できている。音楽担当は監督とは『キック・アス』でコンビを組んだヘンリー・ジャックマン。このシリーズは音楽の担当がいつも入れ替わって、これがX-MENの音楽という決定的なイメージを創出出来ていないが、まだまだ馴染みのないこのひと、X-MENシリーズの一編であり、王道の娯楽アクションであるという大枠を押さえながら、60年代スパイ映画風味などを随所に効かせるいい仕事ぶりで、今後が気になる名前になった。

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