6/18/2011

Skyline

スカイライン 征服(☆)


自分のVFX工房ができることの見本市にはなっている。つまり、業界向けのデモンストレーションだな。が、商品としては成立していないレベル。バカにしながら笑って楽しむことすらも難しい、短いはずの上映時間がひたすら苦痛に感じられる、近年稀にみるゴミ映画である。本作に比べたら、悪名高き『バトルフィールド・アース』だって可愛げがあるだけマシだろう。

まあ、さもありなん、監督は『エイリアンVSプレデター』という最高の素材を与えられて、これまた鑑賞が苦痛になるレベルの続編をつくちゃったストラウス兄弟だもんな。

L.A.を舞台に、パーティのために高層マンションのペントハウスに集まっていた人々が、為す術も無く異星人の地球侵略を目撃する3日間。あー、コンセプトだけだと、インディペンデンス・デイのクローバーフィールド化されたバージョンみたいな感じ。

しかし、クローバーフィールド程度の「見せ方」の工夫があるわけではない。エキストラを使えない制約ゆえか、非常事態におけるパニックを見せるシーンもない。限られた、魅力のかけらもない登場人物たちが、ペントハウス→屋上→地下駐車場を無駄にいったりきたりしているだけで、お話しの工夫もなにもない。いくら世界の終りを目撃する映画だと言ったって、必死のサバイヴァルくらいするだろうよ。この映画のような状況下で、高い建物の上層部に留まろうとする理由が理解出来ない。やる気がないにもほどがある。制約を逆手にとった面白い展開や見せ方を考えるのがクリエーターの仕事ではないのだろうか。自分たちの都合に合わせて登場人物の行動や思考、行動範囲を限定するなど、もってのほかだ。

登場人物たちに、映画制作関係者がいる。ロボットかなにかの出てくる撮影云々の話をしているから、てっきりそれを伏線に、捕獲した異星人やその乗り物を手懐けて映画撮影を敢行するバカ展開を期待したけれど、当然、そういう気の利いたアイディアなんかあるわけもない。まあ、最後の最後に、登場人物の脳みそ食った異星人が狂って(思考を乗っ取られて?)、残された身重の妻を守るという超絶バカ展開が待っているのだが、で、それで面白いのか?そういうのを面白いと思っているのか?

こういうのを見ると、JJ.エイブラムズの企画力だったり、子飼いの監督の演出技術だったりはやはり並ではないなぁ、と感心せざるえを得ない。もっといえば、同じようにストーリーそのものが面白いわけでもなんでもない『宇宙戦争』で、(それゆえに割と広範に不評が聞かれたりもするのだが)、スピルバーグ御大が見せた演出力の非凡さというものに、改めて深い感動を覚える。

インディペンデントの予算規模で、白昼堂々、巨大宇宙船やらモンスターっぽいものやら機動兵器っぽいものが地球上を蹂躙するという絵面を作れるというのは、たしかに感心すべきものなのだろう。しかし、単にそれだけでは、ミニチュアの光学合成をしていた時代と違って、VFXのハードルは限り無く低くなっているという事実の再確認にしかならない。なにせ、あの『宇宙戦艦ヤマト』を、日本で実写映画にできてしまう時代なんだからさ。

結局、作り手個人の個性は失われるかもしれないが、ハリウッドというシステムは、このような駄作のために大金がつぎ込まれる事態を避けるための「リスク・マネジメント」なのだ。様々な脚本家が何度も何度も脚本を手直しし、「商品」としての最低限のクオリティを担保しようとする。(まあ、それでも失敗するときは失敗するのだが。)本作は、そういう規格化されたありきたりの商品ばかりを生み出すプロセスにすら、やはり価値があるものなのだと再認識させてくれたりもするのである。やれやれだね。

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