8/07/2011

Cars 2

カーズ2(☆☆☆)

ピクサー・アニメーションスタジオ25周年、12本目の長編作品は、2006年『カーズ』のキャラクターたちによるスパイ・アクション・コメディである。2時間超の長尺で、米国のマザー・ロード「ルート66」を題材とした主人公「ライトニング・マックイーン」の内省的成長のドラマだった前作とはガラリと趣向を替え、世界各地を舞台として展開する賑やかでハイペースのアクション・アドベンチャーになっている。

物語そのものには深みはないが、ガソリンに代わる代替エネルギーと、石油業界にまつわる陰謀を取り込んでいるあたりの時代感覚はさすがといったところだろう。ライトニング・マックイーンが世界各地を転戦する傍ら、短編作品以降、実質的な主人公並の扱いになっているトー・トラックの「メーター」が、本物のスパイと勘違いをされて頓珍漢な大活躍というストーリーなのだが、マックイーンが出走するレースそのものが陰謀の舞台となることで物語が1本の線につながる脚本は、なかなかのお手並みだと思う。

プロのスパイとして登場する新キャラクター「フィン・マクミサイル」の声を、「オースティン・パワーズ」でもモデルのひとつでもあるMI-6のスパイ、「ハリー・パーマー」を演じたマイケル・ケインが当てているところが聞きどころといえるだろうが、例によってオリジナル言語・字幕版の公開が非常に限定されているのが残念なところ。また、前作の重要キャラクターであった「ドク・ハドソン」は、声を当てていたポール・ニューマンの死去に伴い、劇中写真のみの扱いになっていて、改めてポール・ニューマンの不在を思い起こさせられる。

本作では前作に増してジョン・ラセターの車マニアぶりが最大限に発揮され、名車、迷車、珍車から新車まで盛り沢山。あちこちに相当マニアックなネタやこだわりが隠されているので、何度も何度も繰り返し見て確認する楽しみもあるだろう。5年前の前作からのCGI技術の向上も大きく、濡れた路面への反射や、アニメーション的なデフォルメを加えながらの世界各地の実景の再現具合はため息が出るほど。

なお、2作目になってより明白になったことではあるが、本シリーズの前提となっている車が生き物であるところの世界観は、深堀すればするほど矛盾が噴出して破綻をきたすので、ちょっと気の利いた冗談くらいに思って受け止めるのが適切だと思う。

これまでの物語を中心においたピクサー映画とはひと味違う、気楽に楽しめるキャラクター中心の娯楽映画として、良心的で、よくできた作品である。が、常にそれ以上を期待されてきた重圧のことを思えば、よくこういう割り切りをできたものだと、違った意味で感心する。本作に関していえば、おもちゃ箱の中からお気に入りのミニカーたちを持ちだして遊んでいるつもりで見るのが一番正しい楽しみ方じゃないだろうか。

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