10/09/2011

Dear John

親愛なるきみへ(☆☆)


『メッセージ・イン・ア・ボトル』、『きみに読む物語』、『ウォーク・トゥ・リメンバー』、『最後の初恋』と、そこそこ安定した品質での映画化が続く、ニコラス・スパークス原作ものだが、『HACHI』の犬視点の回想で失笑を買って北米劇場未公開となったラッセ・ハルストレム監督の手で、またしても女性客搾取を目的とした泣かせ映画が作られた。本作、この原作者の映画化作品の出来映えとしては、ちょっと下のほうの部類じゃないか。

主演はここのところ主演作が続くアマンダ・セイフライド(配給会社によりサイフリッドとの表記もあって、そろそろなんでもいいから一本化が必要なんじゃないか。)この人が出ているというのは、その映画が「女性目線」で出来ているというフラグが立っているようなものであるというのが経験則のようなもんだ。

今回の話は、ある夏の日に出会った軍人と学生が、お互いに強く惹かれながらも一方は軍務へ、一方は学業へと戻り、1年後の再開を期しながら、手紙のやり取りを続けるというものだ。男のほうは任期が終わって除隊するつもりでいたが、911に引き続く「対テロ戦争」の戦場に仲間たちと共に向かわざるをえない状況になる。女にもいろいろな事情ができて、決意の末、別れの手紙を戦場に送ることになる。まあ、いかにもこの作者が書きそうな「運命」に翻弄される純愛と悲恋の物語だな。

しかし、この映画が描く「いい男」像の薄っぺらさはなんなのだろう。もちろん、このたぐいの女性搾取映画が描く男なんて、どれもこれも似たり寄ったりかもしれないし、それは男性目線で描かれる映画の即物的な女性像の裏返しに過ぎないということは重々承知しているつもりである。しかし、この映画の「男」、演じているチャニング・テイタムが気の毒になるくらいに、人間味が感じられない、プラスティック人形のようなキャラクターである。「純朴で誠実な好青年」という記号をそのままかたちにしたというのは分かる。が、これが脇役というならともかく、リード・キャラクターなんだから、もう少し何とかすべきじゃないのか。

アマンダ・セイフライド演じるヒロインは、ある意味でたいへん身勝手な女なのだが、そこはそれ、いろいろな言い訳が用意されていて観客の反発を買わない程度に上手く処理されている。このあたりが原作者がベストセラー作家で在り続けられる理由であろうし、ここにアマンダ・セイフライドをキャスティングする意味があるというものなのだろう。

主演のカップルの運命に、近隣に住む自閉症の少年の存在がかかわってくるのだが、それに呼応するように、男の父親が「軽度の自閉症」であるという設定が用意されている。まあ、物語の味付け程度の役割でしかないが、これを演じるリチャード・ジェンキンスが相変わらずの好演を見せてくれる。父親と息子をつなぐ接点におかれた「コインの蒐集」という趣味にまつわるエピソードは、悪くない。

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