10/01/2011

The Man from Nowhere 아저씨

アジョシ(☆☆☆)


これは、あれだな。どっちかっていえば、韓国版『Man on Fire』なんだよな。ほら、デンゼル・ワシントン主演で『マイ・ボディガード』ってあったでしょ。話の構造はあれととてもよく似ている。本当はくたびれた男が演じたほうがよさそうな主人公を、「美男子」が演じるところまで似ているかもしれない。

過去を捨て、世捨て人のように生きている質屋の「おじさん(アジョシ)」。彼が唯一心を通わせた孤独な少女が犯罪に巻きこまれ、命すら危うくなったとき、彼の怒りが爆発する。かつて身につけた特殊工作員としての技能を発揮して壮絶な闘いに身を投じていくのだ。

ポン・ジュノの『母なる証明』で演技者としての実力をアピールしてみせたウォンビンが、ここでは娯楽映画のヒーローという分かりやすい役柄ながら、その内面に迫る好演で、一回り成長したところを見せてくれる。アクション・シーンでも体がよく動いていて、「特殊工作員という過去を持つ男」などという、映画の中だけで登場する嘘くさいキャラクターに、あの国ではあり得ないともいえないなぁ、などというリアリティを与えていて好印象。後半、短髪にすると顔立ちの良さが際立つ。

ところで、こういう映画では、敵となる犯罪組織が非人間的な外道であればあるほどに、盛り上がるものだ。相手のワルが際立てば、主人公(と観客)の怒りが増幅され、主人公の行う正義の鉄槌にカタルシスが生まれる。また、正義の鉄槌そのものが多少行き過ぎていたり残虐だったりしても、相手はもっとヒドイ奴らなんだから、それでいいのだと自己正当化もできるから後味が悪くならない。

そうした意味で、本作の悪人どもは、変な表現だけれども、本当に素晴らしいと思う。薬物密売にとどまらず、児童の監禁虐待と搾取、臓器売買と悪事のフルコースだ。もちろん、臓器を抜き取られて殺された死体とか、抜き取られた目玉とか、ビジュアル的にもインパクトが強い。もちろん、そこで好みは別れるだろう。が、これらは結果的に「殺されても仕方のない悪党ども」であることを印象付けるのに強く効いているのは否定できまい。

また、この映画、そういう悪事の全貌や関係者の複雑な関係を、比較的に分かりやすく交通整理してみせているところがなかなか上手いと思う。全く役に立たない警察連中の存在は、そうした構造を分かりやすく説明するためだと思えば納得が行く。

もうひとつ、主人公と対になる無口だが凄腕の殺し屋を敵方に配置している設定が地味ながらしっかり効いている。こういうのもジャンルの定番であってさして珍しいわけではない。が、互いの実力を認めあい、プロとしての意地をかけ、対等な立場でラストバトルに突入という展開が盛り上がらないわけがないのだ。作り手はなかなか分かっているなあ、とニヤニヤ笑いながら楽しませてもらった。

もちろん、時折見ているこちらをびっくりさせるような規格外の傑作を送り出してくる韓国映画としては、とりたてて誉めそやす傑作の部類ではなくて、ありふれた商品としての娯楽映画ではある。が、娯楽映画として、ありふれた設定を効果的に組み合わせ、きちんと面白い映画に仕立て上げられる実力は侮れない。作品背景に、彼の国ならではを感じさせる要素がコンテクストとして入り込んでいるところも面白い。脚本・監督イ・ジョンボム。日本の、TV局が製作して垂れ流しているようなメインストリームの娯楽映画に、せめてこの程度のレベルを求めることは無理な話なのかね?

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