10/08/2011

The Next Three Days

スリーデイズ(☆☆☆★)


フランス映画『すべて彼女のために』を、ポール・ハギスが脚色・監督・製作を兼ねてリメイクしたのが本作だという。殺人の容疑をかけられて収監された妻の無罪を信じ、脱獄させるために完璧な計画を練りあげて実行に移す夫の姿を描くサスペンス・スリラーだ。残念ながら、オリジナルは未見。ハギス版は舞台をピッツバーグに移しており、有事における米国の警備や捜査の挙動をとりいれたものになっている。主人公にラッセル・クロウ。その他、エリザベス・バンクス、ダニエル・スターン、ブライアン・デネヒーらが出演。

ちなみに、タイトルの「スリーデイズ」とは、妻が他の施設に移送されてしまうことが決まり、用意周到に計画してきた脱獄を実行するにはそれまでの三日間("The Next Three Days"=原題)に行動を起こすしかない、というところに由来する。映画は、それを起点に、いったん過去に戻ることでことの経緯を語り起こしていく構成になっている。

この映画、なかなか面白くできている。しかし、オリジナル作品ではなくてリメイクであるということ、名脚本家であり、監督としての評価も高いポール・ハギスがわざわざ手がける題材なのかどうか、ということで、割り引いて評価したくなってしまうのが人情というもの。本国での評価がまちまちであったのは、そんな理由もあるとは思うが、リアルに振った社会派ドラマなのか、現実離れした娯楽映画なのか、どちらつかずに見えるところも戸惑いのもとになってはいるだろう。

もちろん、非現実的な「娯楽映画」的プロットを、現実の脱獄計画の参考になりそうなほどにリアリスティックな描写を積み上げて描いているところが本作の面白いところなのである。これを実際にやってのけるには相当の覚悟と準備が必要だろうが、無理と断言はできまい(と思わせる)。しかし、一方で、主人公が「脱獄のプロ」に指南を求めるシーンなどは、リーアム・ニーソン演じる「脱獄のプロ」という存在の嘘臭さも含め、現実との乖離を感じさせられて、せっかくリアルに振って積み上げてきた映画の雰囲気を乱しているように思ったりもする。

まあ、そこでハッタリが効かない真面目な演出ぶりが、良くも悪くも監督・ポール・ハギスの限界なのであろう。細かな「リアル」を積み重ねるところまではいい。しかし、嘘のつき方が下手だなぁ、とは思う。脱獄のプロにせよ、ヤクの売人アジトへの殴りこみにしろ、こういう「非現実性」のハードルを、さらっと飛び越えるための算段が足りない。そもそも、ああいう役にリーアム・ニーソンなんかをキャスティングしたら、かえって胡散臭くなるんだがな。でも、一方で、「胡散臭い役柄で登場するリーアム・ニーソンを見る楽しみ」のようなものも確実にあるわけで、要は映画の立ち位置をどう見るかの差であろう。

ラッセル・クロウは手堅い演技。妻役のエリザベス・バンクスは出番が少ないとおもいきや、クライマックスに見せ場があって、なかなか良かった。主人公の父親役として登場するブライアン・デネヒーが、渋いところをみせてくれて嬉しかった。好きなんだ、この人。

0 件のコメント:

コメントを投稿