3/26/1999

EDtv

エドtv(☆☆☆)

ハリウッドでは似たような企画が同時期に乱立し、互いに競うようにして映画化されることがよくある。偶然なのか、時代の気分がそうさせるのか、パクり、便乗の類なのか、競争心・対抗心ゆえなのか、それぞれ事情は様々だ。

「実在の人物に24時間密着、生放送するTV番組」っていうネタが、どうしてこんなタイミングで被ることになったのかも謎なのだが、ジム・キャリー主演、アンドリュー・ニコル脚本、ピーター・ウィアー監督の『トゥルーマン・ショー』と、マシュー・マコノヒー主演、ローウェル・ガンツ&ババルー・マンデル脚本、ロン・ハワード監督の本作『EdTV』とは、作家性の違いとはこういうことかと一目瞭然、そのベクトルが違いすぎて全く違う映画になっているのが面白い。

共通点があるのは、メディアに対する皮肉な考察っていうことだけだな。

あちらの作品が、「神と人間と人生についてのドラマ」であったなら、こちら『EdTV』は、ドタバタ風味のの「風刺コメディ」である。

真実の映像を24時間、編集なしで放送するのを売りにするTV局が、視聴率低迷の挽回策で、ごく普通の男の生活を四六時中、密着で生中継することを思い付く。プロデューサーの目にとまったのが31歳、サンフランシスコ在住のビデオ屋店員エド。テレビのクルーに常に付きまとわれながら、にわかスターとして全米の人気を一人占めするようになっていく。

名声とプライバシー、有名人に群がるメディアやパパラッチ、それに熱狂する大衆心理。ウディ・ハレルソン、マーティン・ランドー、デニス・ホッパー、エリザベス・ハーレー、ロブ・ライナー、エレン・デジャネレスらのアンサンブル・キャストを自在にさばきながら、TVカメラの前で恋人への不実が発覚したり、真実の愛が芽生えたり、実の父親が現れたりといった、主人公と、その周囲の人々のエピソードが綴られていく。

それほど突拍子も無い展開はないのだが、そこは、ロン・ハワードの『バックマン家の人々』をはじめ、これまでにもウェルメイドなコメディを作ってきた脚本家チームだけあって、話の転がし方がうまい。タブロイド紙やUSA TODAY、TVのトークショーなどを皮肉っぽい扱いも笑わせる。

ロン・ハワードも、気負った大作映画を撮ると薄味で今ひとつなんだが、こういうアンサンブル・キャストで見せる小粒なコメディは安定感があって巧い。複雑になりがちな登場人物やエピソードを小気味よいテンポで交通整理をしていく手腕はさすがである。

ただね、脚本家チームもロン・ハワードも、風刺コメディを撮るには人が良いというのか、お行儀が良いというのか、悪意と毒が足りないんだよね。

キャストのなかでは、プロデューサー役のエレン・デジャネレスが面白い。TVを中心に活躍している達者なコメディエンヌで、この映画でも彼女の魅力の一端は十分にうかがい知れるだろう。また、マシュー・マコノヒーとウディ・ハレルソンが兄弟っていうのは誰のアイディアか知らないが、それだけで笑えるキャスティングだった。風貌はどことなく似てるよね。キャラクターはずいぶん違うんだけどさ。

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