3/05/1999

Analyze This

アナライズ・ミー(☆☆☆★)

結婚を間近に控え平穏な生活を送っていた精神科医のもとに、突然、悪名高きNYマフィアのボスが訪れた。全米の親分衆が集う大事な会合を控えて、どうも体調的に優れないので、精神科医でセラピーを受けようと思い立ったというのだ。精神科医は、このオソロシイ患者を拒否することも出来ず生活をかき乱されていく。

ハロルド・ライミス監督作、といえば、まずコメディ映画としてプロの仕事を期待できる鉄板だ。しかもビリー・クリスタルとロバート・デニーロのダブル主演。デニーロがマフィアの大親分をセルフパロディ的に演じるというのだから、これで面白くならなかったら嘘だろう。

だいたい、脚本も危なげがない。「マフィアの親分と精神科医」というアイディアとキャストだけでも勝ちが見えているというのに、ワンアイディアで突っ走るような真似をしないのである。

数ある精神科医の中で主人公が選ばれてしまうきっかけに始まり、対立組織やFBI が絡んで話が徐々にエスカレートしていくプロセス、結婚式やパーティが思わぬ形でめちゃめちゃになっていく顛末、あるべきエピソードがあるべき順番、あるべきかたちで丁寧に組み立てられている。

それぞれのエピソードにおけるシチュエーションの組み立てや、キャラクターの出し入れも的確。台詞のギャグから視覚ギャグまで「フリ」があって「オチ」があり、テンポよく、そして気持よく笑わせてくれる。自ら脚本にも参画しているライミス、さすがに笑いのツボを知り抜いた喜劇人だ。

主演の二人もリラックスしている。互いに、互いの演技を楽しむ余裕すら感じさせる。精神科医に頼り切ってしまうデニーロ親分の可愛らしさ。義理人情に厚く、彼なりではあっても気を使っているところが憎めない。単なる迷惑な闖入者というのではなく、デニーロの演技が「観客に愛されるキャラクター」ヲ作っているのは大きなポイントで、それ故にクリスタル演ずる精神科医が、最初は脅されて嫌々付き合っていた相手の心の問題を、本気で解決してやりたいと感じるようになる心境の変化に説得力が出てくるんだよね。

プロデューサーも務めるビリー・クリスタルは、大物デニーロに遠慮して受け芝居に徹しているかとおもいきや、最後にキッチリ「デニーロのマフィア演技をマネする」大芝居。ヒロインではあるが、リサ・クドロウは添え物で、むしろ、チャズ・パルミンテリ他、おなじみのヤクザ顔役者がしっかり脇を固めて笑いも持っていく。

ドラマ的にないものねだりをすると、大親分の心の悩みだけでなく、精神科医側の抱える父親へのコンプレックスもまた、この二人の関係において解消され、互いに「癒し、癒される」ところまで踏み込めていたら完璧だっただろう。もしかして、その踏み込みが足りない部分を続編で、、、とか?この大ヒットぶりを見ていると、そんな展開もあるのかもしれないな。

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