3/12/1999

The Rage: Carrie 2

キャリー2(☆☆★)

つ・・・つくるのか、これを。

やはり、『スクリーム』の成功がひとつの契機になっているのだろう。そして、80年代にジョン・ヒューズの映画をみていた世代が作り手に回ってきているタイミングだというのもあるのだろう。ここのところ、若いアンサンブル・キャストを使ったハイスクールもの、あるいは、ホラーものが、一時期よりも活発に作られているように思う。

そこで、本作。なぜだか、あの『キャリー』の続編である。

スティーヴン・キング原作、ブライアン・デ・パルマ監督の『キャリー』は、狂信的な母親のもとで育てられた女の子「キャリー」が、遅い初潮を迎えたのをきっかけに超能力を発現する物語であった。クライマックスでは、同級生たちの限度を越えたいじめに彼女が哀しみと怒りを爆発させ、プロムの会場が血に染まり、炎に包まれる。

あれから20年。前作の事件で生き残ったスー・スネルがカウンセラーを務める高校を舞台に、忌まわしい悲劇が繰り返されようとしていた、というのが今回のお話。ちなみに、原作の「キャリー」には続編がないので、これは映画会社の都合による、映画版を底本とした勝手な続編である。

今作は前作の生き残りとして、エイミー・アーヴィング(!)演じるキャラクターが再登場し、さらに前作のフッテージを数箇所挿することで、一応、正当な続編であるという体裁を整えているものの、主人公は新人エミリー・バーグル演じる「レイチェル」だ。(←キャリーじゃないじゃん!)

主人公は違い、時代は違えど、同じストーリーをなぞり、同じ物語が展開される。続編というか、やっすいリメイクというか、そんな感じだな。だって、挿入された前作のフッテージのほうがよっぽど強烈な印象を残すってんだから洒落にならない。

ただ、青春ドラマとしての脚本は、そんなに悪くないと思う。「キャリー」を現代的なコンテクストで翻案するにあたり、「高校の支配的文化に同化できず日陰にいるゴス少女」と、「派手にスポットの当たる日向に身を置きながら、周囲から浮いている誠実な青年」の、孤独と疎外、そして受け入れられることの無い悲劇の恋愛。注目を一身に浴びて自惚れ甚だしいジョックスどもの憎々しさ。もはや、大定番の構図であるが、作り手たちはそんな世界に身を置く多くのティーンズに向けて、丁寧にドラマを組み立てている。

そう、今作の「レイチェル」は、前作の「キャリー」ほどの異形としては描かれていない。そして、孤独ではあっても完全に社会性を欠いた存在ではない。ある意味でどこの日陰にもいる普通の少女であり、身近に感じることが容易な存在になっているのは大きなポイントだろう。

映画のクライマックスは、さすがにヴォルテージが高く、低予算の割にはかなり派手にやらかしてくれている。主人公レイチェルが怒りに身を任せ、全身を茨のタトゥーが覆うという容貌の変化がビジュアル的に面白い。とはいえ、豪邸一軒とパーティの参加者を殺戮するだけなので、街ひとつを破壊し尽くした原作にも、プロム会場を吹き飛ばした前作にも、スケール感では及ばない。最後は、前作を見ていたら誰もが想像する通りのお約束のシーンがある。

この映画、ロバート・マンデル監督で撮影が始まったものの、途中でリュー・バリモア主演のエロティック・スリラー『ボディ・ヒート(Poison Ivy)』のカット・シーアが大幅な撮りなおしの末、完成させたんだそうだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿