3/13/1999

Rushmore

天才マックスの世界(☆☆☆★)

オフビートでとぼけた味わいの奇妙なハイスクール・コメディである。

主人公は、名門の私立学校、ラシュモア学園に通う15歳、マックス・フィッシャーだ。彼は授業にはちっとも身が入らないのだが、ありとあらゆる「課外活動」に異様な熱意を燃やしていて、行動力も抜群。20近くのクラブの代表を務め、あるいは、新たなクラブを創設し、演劇部では脚本と演出と主演を兼ねる。

そんな彼にとって重大な事態が発生する。あまりに成績が悪いため放校されそうになるのだ。ラシュモアにおける学校生活(といっても課外活動)が人生のすべてである主人公にとって、それは一大事。なんとか手を打つために策を巡らせるうち、低学年のクラスを教える美人教師に恋をしてしまう。しかも、主人公とは奇妙な友人関係にあった学校のパトロンが同じ相手に惚れてしまったことから、最初の目的はどこへやら、15歳童貞男と中年オヤジによる、低レベルかつ熾烈な恋の鞘当て争いが繰り広げられていくことになる。

そんなわけで、あまり比べる対象を思いつかない、なにやら奇妙で変則的な映画なのである。しかし、精神的に成熟しきっていない2人の男が繰り広げる三角関係を中心に、主人公の学園生活を通じた精神的な成長が描かれていくという意味ではオーソドックスな青春ものである。

だが、学園物の定型に流しこんで作られた作品ではない。突拍子も無いキャラクターが出てくるが、マンガ的な誇張で描かれているわけではなく、映画を成立させるための「記号」のような扱いでもない。この映画は、一見して奇妙な登場人物の中にある人間味というか、人間そのものが持っている感情や、その人間のなかから滲みでてくるような可笑しさを真摯に見つめ、拾い上げ、綴っていくのである。

あり得ない話なのに、その状況に現実味があり、その感情に切実感があり、共感を誘ったりする。嘘がない、そう思うのだ。そんなところにこの映画の魅力がある。

主演のジェイソン・シュワルツマンはタリア・シャイアの息子だそうだ。ヒロインがオリヴィア・ウィリアムズ。そしてなにより、恋敵になるのが、ビル・マーレー、テキサス大時代からの友人関係だというオーウェン・ウィルソンとウェス・アンダーソン共同クレジットの脚本を、ウェス・アンダーソンが監督。

で、ビル・マーレーなんだ。この人、最近ではジャンルもスタイルもまちまちな作品に起用され、それぞれ怪演を披露していてどれも甲乙つけがたいのだけど、もう、この作品における彼の演技、彼の存在は筆舌尽くしがたき唯一無二のものである。キャラクターの中にある子供っぽさを、オーバーアクトをするのでもなく、さらっと演じきるボケ具合。しかし「助演」に徹して、でしゃばり過ぎないこの節度。

コメディとしては笑いのとり方がスカした感じ。ガハハではなく、クスクス笑いであったり、じんわり積み重なっていく面白さなので、好みが分かれるかもしれない。格好つけすぎたオシャレ系コメディだと思われちゃうとちょっと残念なんだけどな。

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